小川山シーズンも終わりに近づき、慌てて廻り目平へ出かけました。上高地より標高が高いので11月となると寒いのは覚悟していましたが、未明に着いた時、車載の温度計が−1℃となっていたのには驚きました。ただ、日中陽が射すと、登っている限り然程寒くなく、岩も冷たくありませんでした(ビレー中は防寒着が必要)。
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今年は、本チャンやマルチフリー入門ルートで多少経験は積めたものの、それは昨年のフリークライミングトレーニングの成果で、登攀の実力は足踏みどころか昨年末より落ちているような気がします。 |
小川山では、「タジヤンU(5.10a★★)」「往年の乱(5.10b)」「ブラックアンドホワイト(5.10b★★)」の完登が当面の目標。このうち、今までに達成できたのは、「往年の乱」のみ。残り2つはいずれも人気ルート、連休なので混みそうで心配でした。今年1度も触っていない「タジヤンU」は後回しにして、「ブラックアンドホワイト」に絞って練習することにします。
以下は、長いので結論だけ言うと、今回は完登できなくとも絶対にリードするつもりでしたが、トップロープで登ってみて、2人とも、それぞれの問題個所があり、2日合計6本登っても自信を持てなかったので(トップロープでも成功率が50%)結局、リードはまた見送りました(意気地なし)。
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「ブラックアンドホワイト」は、「八幡沢左岸スラブ」のうち、下の岩場の右寄り下段にあります。この岩場は、初中級者向き主体のルートが14本(バリエーションを入れると16本)、ロープスケールは大体10〜20mくらいです。裏からまわってトップロープのセットもできるので、初心者同士でも何とか取付けるのですが、初心者ルートが2本しかなく、私たちには、ちょっと敷居の高い岩場。
14本の内訳は、入門者レベル(〜5.8)0本、初心者レベル(5.9〜5.10b)2本(最も容易なのは「トムといっしょ(5.10a)」)、初級レベル(5.10c〜5.11b)6本、中級レベル(5.11c〜5.12b)6本(但し、最も難しい「ピンチダイレクトは5.12(12b/c)」)。
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「ブラックアンドホワイト(5.10b★★)18m*」は、左端のピナクルにある「トムといっしょ(5.10a★)15m」に次いで易しいルート。フリークライミングルートとしては歴史が古く、そのせいか、18mのルートなのにたったの3本しか中間支点がないことが、私たちが「10bにしては難しい」と感じる最大の要因。
このルートを上下方向に3つに分けると、@下部は左端に右上フレークのある急で手のないスラブ、A中間部は、左上フレークに沿って登るガバホールドの岩場、B上部はカンテ沿いの緩いけど手のないスラブ。
『実質1手の核心(日本100岩場)』はAとBの境界部分で、急なのに手のない「どスラブ」となっています。
@の部分は、オリジナルラインは右上フレークを使って登れるものの、Aの左上フレークに上がるところは中々手強いです。なお、1本目のボルトの真下から直上するバリエーションラインは80°近いスラブなのにほとんど手がなく、その場合5.10dということです(ヤマケイ・アドバンスド・ガイド『フリークライミング入門とガイド(大岩純一・あき子編)』)
人気ルートのため今回はいろいろな人の登りを観察する機会に恵まれました。その様子から、@のノーマルラインは次の(a)(b)2通りの登り方があるようでした。
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(a)スラブの左側の右上フレークを使って、頭上の短いカンテ状直下まで登り、そこからスラブを右へトラバース、右側から上がってくる左上フレークの一角を取ってこれに這い上がる。トラバース中間のスメッジングとそのホールドで踏み替えるところがポイント(重心移動が不十分だと落ちる)。
(b)カンテ状直下までは同じ、細かいことはわかりませんが、カンテを使ってレイバック気味に右上フレークの一角に上がる。
(a)は私たちを含め初心者に多いムーブ、スメッジングから踏み替えの際の右手ホールドが今一つなので指が疲れてくると中々一歩が出なくなるのが難点。
他方、(b)は上手い人に多く、これをマスターすれば手数が減り安定感があるように見えました。 |
@は、(a)のムーブをほぼマスターしているmonchanは、問題なくクリアしていました。他方、kniferidgeは(a)では50%くらいしか成功率がなく、特に指が疲れてくると全く登れる気がしないので、次回以降(b)を試してみようと思います。 |
トムといっしょ(5.10a★)15m |
ブラックアンドホワイト(5.10b★★)18m |
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Aは簡単ですが、2本目のボルトはBまでなく、落ちるとグランドフォールの虞もあるので、リード時不安なら左上フレークの上部でカム(キャメロット#0.3)をセットすると良いと思います。
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Bは左上フレークの最上部からスタート。フレークの上に立つと(下の左画像),
2本目のボルトに届くのは有難いですが、最初の1歩(左足)は急なのに手のないスラブのスメッジング(核心)となるので思い切りが必要(下の中画像)。ホールドは左側コーナーにある指の爪2本がかかる縦ホールドが有効で(左手)、右手はこれといったものはありません。kniferidgeがバランスを取るために使っているのは指の爪1本がかろうじてかかる程度の穴です。今回、左手を起点に左に重心移動することを意識することで、何とかテンションがかからない状態で立てるようになりました。ただ、次の1歩(右足)は傾斜がなくなるのに重心移動が不完全でスリップすることがあり、むしろこちらが課題です。
他方、monchanはここが苦手で、ボルトラインより右にあるかかりの良いポケットを右手で取って登ろうとするため、左への重心移動が不完全になってスリップしてしまうように見えます。ただ、スメッジングする左足がkniferidgeはアウトサイド気味(左上気味)、monchanはインサイド気味(直上気味)なので、右寄りのポケットを使うこと自体が悪いとは言えないのかもしれません。 |