宮之浦岳(日本百名山)
1998.12.18〜20

影宮之浦と永田岳(宮之浦岳山頂より)

屋久島の宮之浦岳に登ってきました。
淀川〜宮之浦岳・永田岳縄文杉〜辻峠〜楠川の縦走コースです。
3日とも概ね天気が良く、関東なら10月下旬といった陽気で、心配した雪は全くありませんでした。
役場とタクシーの運転手の話を総合すると、最近は暖冬で積雪があるのは1月2月のみで、積雪も降雪直後の吹き溜まりで1〜1.5m、稜線は風が強くあまり雪は多くない。積るような雪が降るのは年末年始頃からということでした。
また、屋久島の帰りに行った開聞岳(12/21)を以て、「夫婦で歩く日本百名山」もようやく終わりました。

日程、コース及び時間、並びに天候は以下のとおりです。

【山域・山名】
屋久島/ 宮之浦岳(みやのうらだけ1935m)
       永田岳(ながただけ1886m)

【日程】前夜発2泊3日 =交通機関 -徒歩
12/17;羽田空港=(ANA629)=鹿児島空港=鹿児島(泊)
12/18;鹿児島港7:30発=(トッピー)=宮之浦港(10:05着、10:17発)
    =(バス)=安房(10:55着、11:00発)=(タクシー)=淀川登山口
    11:50着-投石岩屋(幕営)
12/19;投石岩屋-宮之浦岳-永田岳-高塚小屋(泊)
12/20;高塚小屋-縄文杉-ウイルソン株-楠川分れ-辻峠-楠川-楠川温泉(入浴)
    =(タクシー)=宮之浦港15:45発=(トッピー)=鹿児島港18:20着

【メンバー】夫婦2名

【天候、コース及び時間】
[12/18(金);曇り時々晴れ]
淀川登山口12:00-淀川小屋(12:32〜50昼食、水補給)-花之江河14:00-黒味岳分岐14:19-投石湿原14:40-投石岩屋14:46(幕営)

(気温)安房20度/淀川小屋(1380m、12:40)11度/投石岩屋(1710m、15:00)9度
※投石湿原手前の沢を登るところで一部凍結箇所があった。

[12/19(土);曇りのち晴れ]
投石岩屋6:45-翁岳・栗生岳鞍部(水場7:17)-栗生岳7:37-宮之浦岳(7:53〜8:41写真)-焼野三叉路8:55-永田岳(9:42〜10:22写真)-焼野三叉路11:07-平石11:35-平石岩屋(11:48〜12:10写真)-第二展望台12:46-第一展望台13:01-新高塚小屋-13:19-高塚小屋14:08
高塚小屋到着後、縄文杉散策

(気温)投石岩屋(1710m、6:00)7度/宮之浦岳(1935m、8:00)8.5度/永田岳(1886m、10:00)15度/平石岩屋(1707m、12:00)18度
※焼野三叉路から平石方面へ下る斜面に凍結箇所(固定ロープあり)があった。

[12/20(日);曇り]
高塚小屋6:00-縄文杉6:09-夫婦杉6:46-ウイルソン株(7:35〜8:45朝食、写真)-大株歩道入口9:00-楠川分かれ9:55-辻峠10:37-楠川前岳分岐11:48-林道終点12:33-楠川(県道交差点13:11)
(気温)高塚小屋(1330m、6:00)12度

【水場情報】
今回歩いて確認できた水場は以下の通りです。
私が行ったときは1週間以上も雨が降っておらず、投石〜平石間の水場には水量が乏しい所もありました。
●淀川小屋;淀川の水利用
●投石岩屋;投石湿原(岩屋から5分下る)付近の登山道に数カ所流水(水量乏しい)
●翁岳・栗生岳鞍部;「最後の水場」の表示あり、沢水(水量豊富)
●焼野三叉路;(1)永田岳方面に向かう途中にある案内板(三叉路より見える)から左(南)に下りた沢(永田岳からの帰りに見えた)、(2)平石側に10分位おりた沢(水量乏しい)
●宮之浦岳・永田岳鞍部;登山道沿いの沢(水量豊富)
●平石岩屋;平石の標識(岩屋より宮之浦岳側に10分程下ったところ)の近くの沢(水量乏しい)
●新高塚小屋;未確認
●高塚小屋;未確認
●縄文杉展望台直下;高塚小屋より10分(水量豊富)
 縄文杉〜ウイルソン株間に数カ所、ウイルソン株の中(水量豊富)
●辻峠;白谷山荘方面へ数分下った所にある登山道を横切る沢(水量豊富)

【山行記録】
[12/18(金);淀川登山口〜投石岩屋]曇り
◇鹿児島本港〜淀川登山口
朝日に赤く染まった桜島を見ながら7:30出港の水中翼船トッピーに乗船、7割位の入りであるが、登山者は我々だけのようだ。
鹿児島は快晴だったのに、種子島を過ぎて見え始めた屋久島の上空だけはなぜか雲がかかっていて異様な雰囲気である。
 
10:05宮之浦港到着、やはり曇っている。
船から役場に電話確認したところ、今シーズンはまだ1度も雪が降っていないとのこと、ピッケル・アイゼン等の冬装備は港のコインロッカー(1日500円)に置いていくことにする(ロッカーに入らないピッケル等は案内所で預かってもらった。)。
10:17発の「大川の滝」行きのバスに滑り込み安房へ向かう(運賃810円、荷物料240円)。暖房も入ってないのにバスの中は26度もあり、長袖シャツでは暑い。

安房停留所近くの公衆電話でタクシーを呼び、一路淀川登山口へ(5840円)。途中、ヤクスギランド、紀元杉に立ち寄ったが、短時間のうちに急激に(10度以上)気温が下がったのでかなり肌寒く感じた。
11:50淀川登山口着、運転手に記念写真を撮ってもらう。登山口には1台の
車もなかった。

◇淀川登山口〜投石岩屋
12:00に登山口を出発、冬装備を宮之浦に置いてきたもののザックが重く(妻18kg、私23kg)、歩き出すと冬用下着1枚のみでも暑かった。
木の階段や木道等が整備された遊歩道のような道を30分ほど歩くと、全く人気のない淀川小屋に着いた。戸を開けてみるとよく清掃された小ぎれいな小屋だ。
ここで泊まることも考えたが、まだ早いので今日は石塚小屋か投石岩屋あたりで泊まり、明日の行程を楽にすることにした。淀川の清流で水を補給し、行動食で昼食をとって淀川小屋を出発。

立派な鉄橋で淀川を渡るとすぐに急登となる、一旦傾斜が緩み再び急な道を登り切ると、左手にお椀を伏せたような形の高盤岳が見えた(ルートからちょと左に入ったところに展望台がある)。再び急な登りとなり針葉樹に覆われた小ピークを少し下ると小規模な高層湿原が現れる(小花之江河)これを木道で横切り、10分ほどで花之江河に着いた。
池塘、屋久杉の老木、盆栽のような見事な枝振りのツガの木を配した風景は、まさに自然が作り出した日本庭園。しばらく雨が降らなかったので苔がひからびたようになっているのが残念であった。ここは朝は冷えるのか所々薄氷が張っていた。
 
安房では時々薄日が射していたが、この頃にはどんよりして、いつ雨が落ちてきてもおかしくない天気となっていた。ここで石塚小屋のある安房歩道は右に別れるが、分岐の近くにある案内板を見ると、「国土地理院の地形図等はルートが誤っており、石塚小屋に行く場合には下記のように訂正せよ」という意味のことが書かれていた。ところが、肝心の地図は風雨にさらされた為かほとんど判読できないしろもの(わかったのは花之江河から石塚小屋まで30分の表示のみ)、水もあることだし石塚小屋は諦めて投石岩屋に向かうことにする。

木道が終わって10分ほど登山道を登ると、すぐ黒味岳分岐となった。ここから黒味岳の北東側を巻き固定ロープがある短い岩場を下りると、ルートは、ほとんど水が流れていない沢の源頭近くを登るようになる(この辺りが投石湿原)。
ルート上には細いが流水があって水が取れる。一部凍結箇所も見られたが、特に問題になるところは無かった。沢を登りきった所に小平地(投石平)があり、これを下りて北東側に数分登った所が投石岩屋であった(倒れた標識あり)。

投石岩屋は露岩の下で雨風がしのげるだけのものであるが、2人用ツエルトなら二張、高さのないテントなら1張が設営可能、この他岩屋の周囲にはテント数張を設営できるスペースがあった。もう誰も来そうにないので、岩屋の下にテントを張り今日はここに泊まることにした。

[12/19(土);投石岩屋〜宮之浦岳・永田岳〜高塚小屋]早朝は曇りのち快晴
◇宮之浦岳へ
5:00に起床、外はまだ漆黒の闇の中、曇っているらしく星も見えない。
朝食後、テントを撤収していると、早くもヘッドランプで2人の登山者が登って来る(6:30)。聞くと淀川小屋泊まりで3:00に出てきたとのことだった。
ようやくうっすらと明るくなり始めた6:45に岩屋を出発、シャクナゲ等の灌木が茂る岩場もある急登となる。これを10分位登ると背丈近いヤクザサに覆われた平坦な道となり、投石岳〜安房岳〜翁岳の西側直下のトラバース道に入った
ことを知る。遭難碑を過ぎ、投石岳・安房岳鞍部を通過する辺りで南東の空が赤く染まり始めた(7:00頃)。
 

宮之浦岳(永田岳より) 安房岳を巻き翁岳の西側のあたりは木道が設けられ、水苔等の生える高層湿原となっている(地形図にもエアリアにも表記はない)。木道をしばらく下り翁岳・
栗生岳鞍部に出ると小さな沢があった(「最後の水場」の表示、水量豊富、)。
ここから栗生岳、宮之浦岳へと続く登りになる。下の方は花崗岩が風化したザレた道となっていた。鞍部から20分程登ると栗生岳(大きい標識あり)、さらに、背丈を超える程のヤクザサの茂る登山道を15分程登るとそこは宮之浦岳の頂上であった。

花崗岩に囲まれた平坦な頂上では、先行の二人(大学生、男)が写真を撮っていた。この二人、永田岳はパスして今日中に宮之浦まで下りるとのことで驚いてしまう。とても我々が真似出来る技ではない、頑張っても辻峠がやっとだろう。
曇っていたので記念写真だけ撮って永田岳へ行こうとしていると、雲が切れて陽が射し始める。再び三脚にカメラをセットし撮影タイムとなる。 
頂上からは、南を振り返るとカルスト台地を山にしたような翁岳、安房岳、黒味岳等の山々、やや霞んでいるが東に種子島が見え、西には永田岳の立派な岩峰、その直ぐ横には口永良部島を望むことができた。

◇永田岳〜縄文杉
朝食をとっている大学生二人より一足早く宮之浦岳を後にする。背の高いヤクザサの中を15分程下りた所が焼野三叉路であった。ここで宮之浦歩道(縄文杉方面)と永田歩道(永田岳方面)が分岐する。焼野三叉路付近には以前キャンプ場があり、水量豊富な水場があるとのことだが一見しただけでは位置がわからなかった(水場については前述)。ザックを置きサブザックだけで永田岳を目指す。

永田岳へは、宮之浦岳との最低鞍部(1720m、道標あり)まで下り170m位登り返すのであるが、近そうに見える最低鞍部が意外にアップダウンもあり時間がかかった(30分くらい)。最低鞍部の直ぐ手前で小さな沢を渡るところがあり水が得られて助かる。
最低鞍部から永田岳への登りは少し急で数本のルートがあるが、最も左側のメインルートは所々木の階段が崩れていて登りにくい。15分くらい登って傾斜が緩やかになると永田岳頂上と永田歩道との分岐(鹿の沢小屋の道標あり)に出る。
永田岳の頂上へは、まず分岐を右(北)へ進みスラブ状の巨石を登る。その上にある数個の巨石があり、そのうちの左側の巨石を登ると直ぐ下(北側)に永田岳頂上の標識があった。
雲一つない上天気、12月下旬というの風もなく暖かい(15度、10:00)、さっき登ってきた宮之浦岳が堂々としていて、ついつい長居をしてしまった。

往路を焼野三叉路迄戻る。戻る途中小楊子川の源流が見え、三叉路のすぐ近く(永田岳側へ1分足らずの所にある案内板)から下りる踏跡があった。
11:20に三叉路を出発、平石方面への下り始めはザックがズッシリ重く感じられた。
途中凍結している短い岩場(ロープがあり問題なし)を下り、その下の流水(宮之浦川の源流)を渡る。その先の小さなコブを越えるた所が平石(大きな標識あり)であった。直ぐ右手(東)に北沢右俣(安房川源流)が流れているが水量は少ない。

平石岩屋は、前方に見える小ピークにあり、平石から15分程かかった。岩屋は西向きと東向きのものが2カ所あるが奥行きがなさそうだった。
ここからは、特に永田岳・ネマチ等の岩峰群の展望が良く、逆光となるが翁岳・宮之浦岳も立派である。また写真休憩となる。

平石岩屋を下りると、今までのヤクザサの稜線から展望のきかないシャクナゲ、杉の樹林帯となった。
登山道は倒木や木の根張りがあって今までより歩きにくい。もっとも淀川〜宮之浦岳は整備過剰という気がするが。
第二展望台の手前で年配の単独登山者に会う、昨日は辻の岩屋に泊まったそうだ。この時期は健脚の人が多い。この辺りからヒメシャラや枝振りの見事なツガなどが見られるようになる。
第二展望台、第一展望台は名ばかりで、木々の間から宮之浦岳方面が見えるが展望は良くない。第一展望台より20分ほど下ると新高塚小屋、さらに50分程で今日の宿の高塚小屋に着いた。
高塚小屋は高塚尾根の鞍部にあり収容人数20名、見かけの割に小ぎれいな小屋である。早速水の調達をかねて縄文杉まで写真撮影に行く。

小屋より下ること5分、突然樹林の中から立派な展望台が現れ、縄文杉は左手に、強烈な存在感を漂わせながら静かにどっしりと立っていた。

まだ3時前というのに森は薄暗く樹齢7200年の縄文杉と対峙していると不思議と心が落ち着き、時がたつのも忘れてしまいそうな感覚に陥る。
写真撮影後、高塚小屋へもどる。食事の支度をしているとTVの撮影隊と称する人たち(総勢8名)がやってきて、急に賑やかになった。

[12/20(日);高塚小屋〜楠川]曇り

◇高塚小屋〜ウィルソン株
6:00にヘッドランプの灯りとコンパスを頼りに高塚小屋を出発する。
夜中、小屋の外ではザワザワと音がして雨かも?と不安であったが地面は濡れておらず、ひとまず安心。
ガスっている上、木の根張りや倒木が多い登山道は、暗いと歩きにくいばかりかルートファインディングに神経を使う。

夫婦杉(6:46)の付近でようやくうっすら明るくなりほっとする。この杉は2本の杉がお互いの枝を伸ばし合体しており、しっかりと肩を組んでいるようで微笑ましい、しばし休憩。
さらに1時間ほど下るとウィルソン株に着く。これは、江戸時代に切られた屋久杉の切り株で、苔むしており中は空洞。10畳程の広さで神社が祀られ、延命水と呼ばれるわき水があった。太陽の光がとどかない深い森の中で静かに湧いている延命水は本当に効きそうである。写真撮影後、ここで朝食を摂った。

◇楠川へ下山
ウィルソン株から下り始める頃から縄文杉見物と思しき軽装の人達とすれ違うようになる。15分ほどでトロッコ道に入り(大株歩道入口)、これを1時間ほど歩くと楠川歩道入口に達した。
楠川歩道は、辻峠への急登ではじまる。約250mの登りであるが標高が低いこともあってかなり汗をかいた。40分強の登りで辻峠に到着、ここで一息つく。
地面ばかり見ていたので辻の岩屋は見落としてしまった。この辺りは水が豊富で苔が多い。

沢沿いの登山道を下り白谷山荘を過ぎると、白谷雲水峡(電話なし)方面への道を何度か左に見送る。
辻峠から約1時間で車道と交差する楠川前岳分岐に到着。
白谷川支流を渡り三本杉を過ぎると、城之川沿いの急な下りとなる。その左岸を高巻いた(結構高度感がある)後、杉林の中を歩くようになると楠川登山口はすぐであった。

登山口から約40分の車道歩きで海岸沿いの県道に到達。このT字路に「楠川温泉右へ15分」の表示があるが、以後県道からの入り口まで案内がなく(バス停2つ分)疲れた身体には結構堪えた。
楠川温泉は数人しか入れない小さい温泉ではあるが、日帰り入浴ができる数少ない温泉とのこと。その日のうちに帰る登山者にとってはありがたい存在である(300円、月曜休み、9:00〜18:00、電話あり)。
入浴後、タクシーで宮之浦港へ(1490円)、最終のトッピー(15:45出港)で鹿児島へ戻る。

以上

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