Ⅱ峰頂上は広い台地状で、主稜上で幕営するなら最高のテン場。また、来住方の雪稜を俯瞰するにも抜群のロケーションである。翌日が好天なら、既に14時近いので、ここで泊って、翌朝展望写真を撮り、雪が締まって条件の良いうちに頂上雪壁のアタックというのは、とても魅力的なプラン。ただ、今回は2つの前線に挟まれ、後の方が明日午後には接近するという予報。あと1~2時間早ければ今日中に下山した方が良いくらいだった(この時点では白馬山荘泊りは既定事項)。 |
Ⅱ峰頂上より来住方を振り返る マウスポインタon→地点名表示 |
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Ⅰ峰頂上雪壁は、文献によると『斜度60度・55~60m』とある。Ⅱ峰を登っているときは意外に緩そうに見えたものの、目の当たりにするとやはり上部は急だし、長い。また、『途中の岩場が出ていれば残置ハーケンが使える』とあり、中間部にもっと顕著なテラス・バンドの存在を予想していたが、希望的観測に過ぎずがっかり。因みに、当該岩場は下画像の左側上部に写っている三角形の岩である。 |
ところで、先行の3人パーティーは中間部まではコンテ、上部はスタカットに切り替え、最上部の雪庇は3つ見える切り欠きのうち真ん中のものを越えていた。そのラインは取付付近のベルクシュルントも回避でき、下部は登りやすそうだが、スタカットに切り替える際のビレーポイントの構築や上部の登攀は結構手間取っているように見えた。 |
気温は5℃くらい、日も差していないのに雪はグサグサのシャーベット状、スタカット2Pで行くとして、万が一上部ピッチでリードが滑落した場合、SAB(+雪上アンカー)で本当に止められるか不安になった。そもそも、こんなに急な雪面の途中でバケツを掘ってビレーポイントの構築など想定外で、事前の練習不足を痛感した。
となると、やはり、岩場経由で行くしかなさそう。ただ、そのラインには新しいトレースがない点が気になった。 |
Ⅰ峰頂上直下の雪壁(60度・55~60m) マウスポインタon→登攀ライン |
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1P目はknリードで残置ピンのある岩場まで。ベルクシュルントを越えてしまえば、岩場の横までは容易だった。ところが、岩場へトラバースしようとすると、雪が薄く(雪の下はスラブ岩のミックス)、アックスもクランポンもあまり利かない。その辺りまで来ると、確かに60度くらいで高度感もあるので、スノーバーで中間支点を取り(気休め)、怖々岩場の端まで移動。その後は何とか岩角にピックをフックでき幾分安定したが、一度スリップして岩角にフックしたアックスにぶら下がったときは肝を冷やした。 |
残置ピトンは岩の凹角部分に2本、もう1本打ち足してビレーポイントとした(ロープスケール25m)。 |
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2P目は不調のknに替わって、monchanリード。岩場から右上してトレースに乗り、一番左の切り欠きまで直登し、雪庇を越える。
アイスクライミングも相対的にはmonchanの方が上手いし、Ⅲ峰の登りを見ても今日は調子よさそう。何といっても、ビレーポイントの信頼性が高いので、お互いに安心だ。 |
やはり雪質が悪く、右上部分と雪庇の乗越しはビレーしていても緊張した。特に後者は、同じ個所で何度も登降を繰り返し、かなり苦労している様子。 |
フォローのknは、雪庇の下まで2本のアックスのシャフトを手首が埋まるくらいまで突っ込み、何度もけり込んでステップを補強しながら登った。
monchanは、途中スノーバー4本で中間支点を取っていた。ダイナミック荷重にどの程度有効かは疑問だが、リードならこれがあるのとないのとでは気分的に全く違うと思う。
最上部は3m弱ながら垂壁、相変わらずステップが不安定でズルズル滑る。場所が場所だけにリードのプレッシャーは如何ばかりか、monchanはさぞかし大変だったろう。アイスクライミングの要領で突破したが、雪庇の上面にアックスが決まるまでは中々立ち込めず苦労した。 |
2P目をリードするmonchan(ロープスケール35m) |
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白馬岳に立ったのは16時過ぎ(本音の予定より約2時間遅れ)、無人の頂上で記念写真を撮る。やはり天気は下り坂のようで風も吹いている。殆ど展望はなく残念。
ホッとしたのか空腹を感じる。夕食まで持ちそうもないのでギアの解除をしながら行動食を補給した。 |
今日の宿の白馬山荘へ下る。風に飛ばされて主稜線は雪が少く、クランポンでは歩き難かった。 |
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