正月の笊ヶ岳(2629m)
(南アルプス南部・白峰南嶺 2011.1.1〜3)
  
 
その1
その2
その3
その4
 
 雪山ハイク  山の手帳
 

【はじめに】

小笊越しに富士を望む(大笊より)  2011年の年始(1/1〜3)は笊ヶ岳へ登ってきました(老平(おいのだいらorおいだいら492m)から往復、桧横手山及び布引山幕営)。 
 笊ヶ岳は白峰山脈南部(白峰南嶺)の最高峰(2629m)、「ざる」を伏せたような山容が山名の由来とされています。主稜線上の大笊とその東に延びるランカン尾根にある小笊との双耳峰で、赤石岳で初めてその姿を見てから(1995年)ずっと気になっていた山。
 富士山・南アルプスの展望台としても知られ、行くなら雪の季節にと思っていました。ただ、最近は日帰りの記録(無雪期・残雪期)もあるとはいえ、標高差2100m、途中に小屋もなく、私たちにはハードルの高い山です。もっとも、森林限界はほとんど超えないし、正月なら雪も多くなくトレースも期待できると思っていたのですが・・・・。

【日程・行程】

前夜発(注1)2泊3日(桧横手山及び布引山幕営)
山行日1/1(土)〜3(月)
1日目(1/1(土))行動時間8時間4分
老平(492m)7:40−(林道)−林道終点(600m)−廃屋−(奥沢谷左岸高巻道)−広河原(890m渡渉)−(以後尾根道)−山の神(1210m)−4本ヒノキの肩(1590m)−桧横手山(2021m幕営)15:44
2日目(1/2(日))行動時間9時間14分+3日目の偵察1時間
桧横手山(2021m)7:15−JP(注2)−布引山(2584m幕営)16:29
3日目(1/3(月))行動時間17時間48分(休憩・写真・テント撤収等の時間を全て含む)
布引山4:07−鞍部−笊ヶ岳(2629m)−鞍部−布引山−桧横手山−広河原−林道終点−老平21:55
(注1)自宅(横浜)〜老平登山口2時間35分(首都高調布IC〜中央道〜中部横断自動車道増穂IC・双葉SAでの仮眠時間除く)
(注2)フトオノ尾根(布引山から東南東へ延びる尾根)2400m付近の小ピーク。ここからフトオノ尾根から広河原へ至る一般道のある支尾根が分岐する。

【メンバー】夫婦2人

【山行記録】

0.アプローチ等
 年末年始は強い冬型、当初予定していた八ヶ岳にも影響がありそうなため、もっと太平洋側なら晴天が期待できるかもと笊ヶ岳へ変更。

登攀具はなくなったが、小屋泊まりが幕営となり、終日重荷を背負っての雪山歩きは久々で気が重い。特に妻は「正月は楽な山行」を期待していたため不満そうだった。
 大急ぎで装備の入れ替えや情報収集を終え、出発できたのは大晦日の21時すぎ。中央道(下り)が意外にガラガラ、2時間たらずで双葉SAに到着(ここで車中仮眠)。最近は山では使わなくなったマットと古いシュラフ(3シーズン)のおかげで暖房を入れなくてもよく眠れた。
1/1(土)晴れのち曇り
 年が明けて6時に双葉SAを出発。双葉JCTから部分開通している中部横断自動車道に入り、終点の増穂ICから甲西道路・国道52号を経て山梨県側登山口の老平(おいだいら)へ。52号を右折してから何度か道路の番号がかわるものの、概ね西方を目指せばよく1時間足らずで登山口のある駐車場へ到着した。
 老平は、雨畑湖というダム湖のそばの山間の集落。10台弱止められる駐車場には地元ナンバーでない車が2台あった(このときは先行者が2パーティーあると思い喜んでいたのだが)。軽く朝食を摂り(食べている最中に初日の出)、準備にかかる。標高(約500m)の割りに気温が低く(7時過ぎで-6℃)、なかなか車から出られず出発が大分遅れてしまった。 
1.老平(492m)〜広河原(890m)
 駐車場にある案内板を確認して西方へ続く林道へ、すぐに関係車両以外の車止めのゲートがあり脇から林道を進む。所々雪があるも歩行に支障なし。岩をくり貫いて造られたトンネルを抜けしばらくすると車が転回できる広場に出た(林道終点)。
 
 林道ゲート  トンネル  林道終点

 林道終点から細くなり山道らしくなる。途中茶畑や廃屋の横を通り、小さな沢を橋で渡ると、奥沢谷左岸道となった。はじめは手すりもあり、落ち葉の積もった明るい道は、陽だまりハイクといった感じ。

途中にある茶畑   廃屋の脇を通る  落ち葉の積もった道を歩く

 10分ほどで現れるつり橋(武沢)を渡ると、様子は一変。手すりが傾いていたり道が細いのに脱落していたりと、落ち葉のラッセルを楽しむ余裕などなくなった。やがて、小規模な氷瀑状となり、数mの氷柱が現れる。ここは沢側に潅木があるものの、その下は奥沢谷が遥か下まで切れ落ちておりいやな感じ(この辺りはずっと高巻道)。それも完全には凍ってはおらず僅かに水流があって濡れるし、足下はツルツルに凍っていて厄介。ピッケルでカッティングしながら慎重に歩を進めたが、時折氷柱が落ちてきて頭上にも気を配らなければならずちょっとした難所だった。

武沢をつり橋で渡る  小規模な氷瀑の下を通る箇所があった  

 氷瀑を過ぎると日当たりが悪いのか、積雪のある箇所が多くなる(細いところもありスリップ注意)。奥沢谷へ流入する小さな沢が何本もありこれを鉄橋で渡る。
 奥沢谷沿いの登山道は、南西から次第に北へと向きを変えるに従い沢が近づいてくる。「この先、最終水場」の表示が出て広河原はすぐかと思いきや、一旦川原に下りても登り返しがあり、渡渉点まではさらに20分以上要した。

氷瀑を過ぎるとずっと雪道   川原に下りたり登り返したり  渡渉点→拡大
積雪ある川原は、水量も多く水際の岩は凍っている。渡渉点は、対岸に表示もありすぐ分かるものの、重荷なので、そこを飛び石伝いに渡るのは困難。サンダルも持参していたが、冷たそうな水流に足を入れる気もしなかった。「上流にも渡れるところがある」というネット情報を思い出し、スケートリンクのようになった川原を少し遡ると倒木が渡してある箇所が見つかった。ただ、重荷を背負ってこの上を歩くのは余程バランスが良くないと無理。絶対に靴を濡らすわけにいかないので格好は悪いが、馬乗りになって渡った。
渡渉に難渋していると、年配の単独行氏が対岸から降りてくる。ワカンを持っていたが小さめのザックで、2本のストックを上手く使って表示のある通常の渡渉点
を渡っていった。言葉は交わさなかったが何となく「敗退かな」と感じた。駐車車両は2台だったので、このときはもう1パーティー先行しているものと思っていた。
2.広河原(890m)〜山の神(1210m)〜桧横手山(2021m)

 広河原は、右岸の一段上の小平地で、沢から水も得られ幕営適地(小さいテントで10張)。ただ、奥沢谷左岸道が整備されて老平まで時間がかからなくなったので、現在はテン場としての利用価値はあまり高くなさそうだ。

広河原から尾根道となる。この道は、フトオノ尾根(布引山から南下する尾根)上の2400m付近から東に分岐する支尾根上につけられた一般道で全般的にかなりの急登。
「山の神」までは落ち葉と雪のミックスした長いジグザグ登り。昨年再訪した火打山の十二曲がりの何倍にも感じた。
いつの間に雪は踝くらいになり少し傾斜が緩んだところに祠がひょっこり現れる(「山の神」)。小休止の際アイゼンを出すか迷ったが、まだ積雪も傾斜も大したことなかったので付けなかった。

 広河原から
雪の尾根道
 山の神  古いウィンチが放置されていた

「山の神」を過ぎると雪は多いところで膝下くらい、先行者の踏跡はあるが、かなり急傾斜となったため途中でアイゼンを履いた。
 高度計で1500mくらいのところに古いウィンチが放置されており、造林小屋跡のようだ(雪の下にワイヤーが隠れており躓き注意)。樹林の中は風がなく歩行中は汗ばむが、立ち止まると寒さを感じた。
 
 エアリアマップに記載のある「4本ヒノキの肩(1590m)」は場所を特定できないまま通過。テープや時折道標もあり、先行者のトレース(せいぜい数人)のおかげでルートファインディングは容易。
ただ、サラサラの新雪の急登は意外に歩きにくく、雪量の割に時間がかった(山の神〜桧横手山の休憩込みの平均240m弱/時間)。

樹林に覆われた桧横手山頂上(立ち木に手書きの標識があり)に着いたのは3時半をまわってから。フトオノ尾根まで上がりたかったが(翌日全く不可能だったと判明)、1時間もすれば暗くなりそうだし疲れもあって今日はここまでとする。表示の少し先にスペースを見つけテントを設営した(テントサイトは数箇所あり)。

【山行データ】
1/1(土)晴れのち曇り
老平駐車場(492m)7:40−林道ゲート7:45−トンネル7:57−林道終点(600m・所々雪が現れる)8:14−廃屋8:23−つり橋(武沢を渡る)8:37−氷瀑下8:50−広河原左岸9:40−(渡渉)−広河原右岸幕営地(890m)10:00/10−(以後尾根道)−山の神(1210m踝くらいの積雪)11:03/09−(アイゼン装着)−1460m地点12:03/10−4本ヒノキの肩(1590m)−1650m地点12:57/13:05−1880m地点14:23/32−1950m地点15:13/19−桧横手山(2021m幕営)15:44

積雪
・林道終点より現れ、奥沢谷左岸道は概ね数cmの積雪あり。
・山の神付近より踝以上となり桧横手山付近は膝高くらい。
 
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