正月の甲斐駒ヶ岳(99.1.1〜3)
   
99年の初登りに甲斐駒ヶ岳へ行ってきました。仙水小屋ベースの往復(戸台〜北沢峠〜仙水小屋〜甲斐駒ヶ岳)です。
年始はあまり雪が多くないと聞いていましたが、予想以上の少なさで新雪期のような感じでした。正月くらいはゆっくりしようということで仙水小屋2泊としました。今回のような雪の状況なら山中1泊2日も十分可能だと思います。
日程、コース及び時間、並びに天候は以下のとおりです。
【山域・山名】南アルプス・甲斐駒ヶ岳(2967m)
【日程】前夜発2泊3日,以下の==は車、--は徒歩
12/31;自宅(横浜18:50)==(第三京浜、首都高、中央道)==辰野PA(23:47着、車中泊);暴走族渋滞のため辰野PAで車中泊になった。
1/1;辰野PA(5:25発)==伊那IC(5:36)==戸台登山口(6:28着、7:13発)--丹渓山荘下--北沢峠--仙水小屋(12:09着、泊)
1/2;仙水小屋--仙水峠--駒津峰--六方石--甲斐駒ヶ岳--仙水峠--仙水小屋(泊)
1/3;仙水小屋(7:05発)--北沢峠--丹渓山荘下--戸台登山口(10:16着、10:30発)==伊那IC(11:20)==八王子IC(13:35)==自宅(横浜)
【メンバー】2名(私+妻)

【山行データ】
[1/1;快晴]
戸台登山口7:13--白岩堰堤7:55--角兵衛沢出合8:48--丹渓山荘9:23--大平山荘11:02--北沢峠11:19--仙水小屋12:09
所要時間;4時間56分(歩行4時間25分、休憩4回31分)
<栗沢山散策>
仙水小屋12:30--仙水峠12:58--栗沢山の森林限界付近13:37〜14:14(写真)--仙水峠14:36--仙水小屋(14:55着、泊)

(積雪・気温)
戸台〜南ア林道出合(1850m位)までルート上に雪なし
大平山荘(1960m、11:05)10cm、-6度
仙水小屋(2140m、12:10)20cm、-4度
栗沢山の森林限界(2500m付近、14:00)50cm、-10度
※白岩堰堤の先で戸台川の右岸から左岸へ徒渉する所は、全面凍結しておりどこでも渡れる。藪沢を左岸から右岸へ丸木橋で渡り返す所は未凍結。

[1/2;曇り時々晴れのち雪]
仙水小屋(6:25発)--仙水峠(6:49〜7:15写真)--駒津峰8:42--六方石9:09--甲斐駒ヶ岳(9:57〜10:39写真)--六方石11:12--駒津峰11:32--仙水峠12:24--仙水小屋12:40
所要時間;(往復)6時間15分
(登り)3時間32分(歩行2時間42分、休憩4回50分うち写真26分)
(頂上休憩)42分
(下り)2時間1分(歩行1時間51分、休憩3回10分)

(積雪・気温)
仙水峠(2264m、7:00);30cm、-7度/駒津峰〜六方石;50〜60cm、
六方石〜甲斐駒ヶ岳(冬道);雪少ない、岩の間に20cm位
甲斐駒ヶ岳(2967m、10:00)風で雪少ない、吹き溜まりで20cm、-10度
※仙水峠〜駒津峰上部で部分的に木が薄い所があり風が強く断続的に凍結。
※六方石〜甲斐駒ヶ岳;雪が少ないため、直登ルート(冬道)だけでなく巻き道(夏道)も通行可能な状況だった。但し、雪が増えれば雪崩・滑落の危険があるところなので避けた方がよいとのこと。

[1/3(日);曇りのち晴れ]
仙水小屋7:05--長衛小屋7:25--北沢峠7:35--大平山荘7:48--丹渓山荘8:35--角兵衛沢出合8:58--白岩堰堤9:37--戸台登山口10:16
所要時間;3時間11分(歩行2時間58分、休憩3回13分)

(積雪・気温)
仙水小屋(2140m、6:00)25cm、-10度
北沢峠(2030m、7:35)25cm、-8度
戸台登山口(1010m、10:20)雪なし、-3度

【補足】
長衛小屋前テン場の水は、南ア林道から長衛小屋へ下りるルート上の左手の流水を利用(表面は凍結している)。
仙水小屋の水場は通年利用可能とのこと。

【山行記録】
[1/1;戸台登山口〜仙水小屋]快晴
◇〜戸台登山口
昨日は、年末恒例、中央道の暴走族渋滞(三鷹IC〜河口湖方面のJCT)にはまってしまい、新年を辰野PAで迎えることとなった(ここで車中泊)。
元旦は辰野PAを5:25に出発、伊那ICで高速を下り(5:36)、高遠町、長谷村を経由(国道152号)して、戸台川の河原にある登山口に着いた時はまだ薄暗かった。年始とあって河原にある駐車場には50〜60台の車が止まっていたがまだ余裕があり、ひと安心。身支度を整え、臨時に設置された長野県警の登山相談所に計画書を提出し、明るくなった7:13に歩き始めた。出発するのが遅いのか他には40代半ばの男性2人パーティーだけだった。

◇戸台登山口〜丹渓山荘下
白岩堰堤のすぐ上流にある堰堤までは戸台川右岸に設けられた土手のような工事用道路を歩く。途中まで流れていた水も白岩堰堤からは完全に凍結し見られなくなった。40分ほど歩き砂防ダムの階段を登ると行く手に甲斐駒ヶ岳、駒津峰、双児山が連なって見えた。行動食と水を摂り、ヤッケを脱いで出発する。
砂防ダムの階段を下り、全く水の流れていない戸台川を左岸に渡る。昨年3月に来た時は水が多くて徒渉箇所を探すのに苦労したところだ。この辺りからうっすら雪が見られるようになるが、ルート上には全くなかった。単調な河原歩きに飽きてきた頃、双児山の背後からようやく太陽が顔を出した。もうとうに8時をまわっており初日の出という感じは全くなかった。
この頃から甲斐駒、仙丈を目指す何組かのパーティーを見かけるようになった。いくつかの沢を右に見送り、左手の鋸岳が近くに見えるようになると程なく標識があり角兵衛沢出合に着いた。ここはそのまま通過し20分程歩いて藪沢を丸木橋で渡った所で休憩する。藪沢には水が流れており、下山してきた登山者が水を汲んでいた。「おめでとうございます」という下山者の挨拶にようやく新年の訪れを実感する。
今年はどんな山に巡り会えるであろうか、いずれにしても安全登山で行きたいものだ。一段高いところにある丹渓山荘を左手に見送ると今までの平坦な河原歩きが終わり、北沢峠までの標高差約600mの登りが始まる。

◇北沢峠へ
まず、双児沢を高巻き(この取付は凍結時は注意が必要。今回は乾燥していて問題なかった。)、さらに、この沢を丸木橋(積雪、凍結時注意)で左岸に渡ると八丁坂の登りとなる。八丁坂はつづら折りになっており、積雪時にショートカットして登りでもしない限りそれほど急に感じない。この辺りでもほとんど積雪はないが、次々に下山してくる登山者の1/3位は、なぜかアイゼンを履いていた。
勾配が緩んで平坦な樹林の中を歩くようになると、時折、樹木の切れ間からほとんど雪のない鋸岳や黒々とした山腹を横切る白くなった南アルプス林道が見えた。ルートが南アルプス林道(以下南ア林道と表記)と初めて交差する所(1850m付近)からようやく積雪を見るようになり、スパッツを着ける。春にカモシカに出会った所だ、左手に双児山が大きい。もう1度南ア林道を横切り、うっすらと雪が積もったやや急な道をひと登りすると大平山荘の前に出た。南ア林道を横切り再び樹林の中を歩くようになる。雪は少し増えるが、トレイルはしっかりついており赤布等も多いので迷うことはない。もっとも、雪が多くなると上部の南ア林道に出る辺りが急で大変ではあるが。南ア林道に出て暫く雪の林道を歩くと長衛荘のある北沢峠に着いた。行動食と暖かい紅茶で一息いれる。

◇仙水小屋、栗沢山散策
南ア林道から標識に従って北沢の河原へ下る。途中の左手に流水(水場)があり、その周辺は凍結している。ここを注意して下りると長衛小屋に着いた。長衛小屋前のテン場は30張程の色とりどりのテントがあり、さながらミニ涸沢といった感じ。右を見ると真っ青な空に白い小仙丈、左には摩利支天が顔を覗かせていた。

駒津峰と甲斐駒

仙水小屋へは長衛小屋前にある丸木橋を左岸へ渡り、すぐ栗沢山の直登ルート(トレイルあり)を右に分ける。いくつかの堰堤を通過し再び右岸へと渡り返す。雪は30cm位あるがしっかりしたトレイルがあり全く問題ない。ロープが設置されたちょっとした岩場を登り、丸木橋で再度左岸に渡ると仙水小屋は直ぐであった。

せっかく天気も良いことだし、まだ時間も早いので、小屋番の人のお薦めの「栗沢山の展望台(森林限界の辺り)」まで散策に出かけることにする。「4時が食事なので頂上へは行かないように」と念をおされた。

樹林の中の雪道を登り、これを抜けるとガレ場となるが適度に雪があり無雪期よりかえって歩きやすい。下りでトレイルがない時には樹林帯への入り口がわかりにくくなるそうだ。30分足らずで仙水峠に到着する。
肩を並べたような甲斐駒と摩利支天にはほとんど雪が付いていないように見えた。駒津峰へのルートを左に分け、右の栗沢山へのルートを登る。樹林の中の急登であるがこちらもしっかりしたトレイルがあり登りやすい。一応アイゼンは持ってきたが必要なかった。

40分程で樹林を抜けると、真っ白な仙丈と雪のほとんどない甲斐駒が対照的な姿を現した。雲が全くないのが残念だが、仙水峠と違い摩利支天を従えた甲斐駒が立派だ。気温-10度は強風のせいか極端に寒い。頂上は早々に諦め寒風にふるえながらの写真を撮った。往路を小屋に戻る。
小屋は、甲斐駒から戻ってきた人で賑わっていた(3パーティー9人)。

甲斐駒と摩利支天
[1/2;仙水小屋〜甲斐駒ヶ岳(往復)]曇り時々晴れのち雪

甲斐駒と摩利支天
◇仙水峠〜駒津峰〜六方石
今日はいよいよ甲斐駒登頂の日、闇の中に小仙丈がぼんやり見えるが、雲が多そう。5:30に朝食をとり、写真撮影のため妻より一足先に仙水峠へ向かう。
昨夜は一晩中ストーブがついていたおかげで暖かく、ぐっすり眠れた(交代でストーブの管理をされていた小屋番の方々に感謝)。この小屋の食事とサービスの良さは評判どおりである。

何とか朝焼け前に仙水峠に着くことができ、急いで三脚を立てる。オベリスク付近の雲が色づきはじめると、朝の訪れは早かった。白い仙丈が赤く染まり、やや色が薄くなると今度は甲斐駒と摩利支天が朝日で輝きはじめた。

妻と合流し7:15に出発する。駒津峰へは標高差約500mの樹林帯の急登。雪は多い所で40〜50cmといったところ、よく踏まれており段差が雪で緩和された分無雪期より歩きやすく感じた(気分の問題で前行ったときより時間はかかった)。はじめはストック一本で歩いてきたが、昨日登った人から「駒津峰の登りで上部の樹林が切れる所と甲斐駒頂上直下は風が強い」と聞いていたので、傾斜が緩んで最初に樹林が切れる所でピッケルを出してアイゼンを履いた。雪が締まっていてアイゼンが気持ちよいくらいよく効く。
暫く歩くと再び樹林が切れ、風が強いのかほとんど雪が見られなくなった。この辺りは、凍結するのか砕けた氷片が多数散乱していた。また樹林の中に入り、雪の斜面をひと登りすると視界が開けて駒津峰の頂上に出た(2740m、8:42)。ここで双児山からのルート(トレイルあった)と合流する。鋸岳の岩峰や目前の甲斐駒はよく見えたが、アサヨ峰や仙丈の上部には黒い雪雲がかかりはじめており天候悪化を予感させた。
駒津峰を過ぎるとやせた雪稜歩きとなる。雪が多かったり風が強いときは要注意だ。直ぐ先の2752m峰から急下降し(雪は60cm位で問題なかったが、多くなると怖そう)、次のコブを右側の樹林に入って巻く(尾根通しに直登するトレイルもあった)。再び尾根に戻り、露岩が見えるようになると六方石であった(9:09)。六方石付近は岩の間に雪が詰まっていてかえって歩きやすかった。

◇六方石〜甲斐駒ヶ岳〜仙水小屋
六方石から甲斐駒ヶ岳へは南斜面にトラバース気味につけられた巻き道(夏道)と尾根通しに直登する冬道とがあるが後者のルートを登る。一応岩稜ルートであるが、雪が少なかったのであまり問題なく登れた。ルート下部は巨岩が多く岩稜歩きといった感じだがさほど長くなく、上の方は岩稜帯を右から巻くようになっていた(ペイント等の表示、トレイル共に明確)。強いていえば1カ所スタンスが遠いところがあり、アイゼンの分、余分に足を上げなければならずやや登りにくい所があった。丁度ここを登っている時、アイスバイルを手にした若者2人が下りてきた。今日初めて会った登山者である(4時にテン場を出たとのこと)。また、頂上付近では黒戸尾根を登ってきた単独登山者にも会った。昨夜泊まった七丈小屋は一人だけだったそうだ(寒そう)。


鋸 岳

9:57に頂上に着く。気温はマイナス10度、風はあまりないのでさほど寒く感じない、青空は見えないものの薄日が射していた。

南は、観音岳の背後に富士山、アサヨ峰・栗沢山と連なる白い峰々の後には北岳がひと際高かった。
真っ白な仙丈は相変わらず雪雲がかかっている。北は、雪がほとんどない八ヶ岳、左手にはいつかは登ってみたい鋸岳の岩峰が見えた。

昨日は雲一つない快晴で、槍ヶ岳が見えたそうである。再び南に目を転じるともう北岳は雲の中であった。暫く粘ってみたものの展望は悪くなるばかり、祀られている祠に今年の安全登山を祈願して頂上を後にした(10:39)。

往路を六方石へ向かって下りる。下り始めて10分もすると空が暗くなり雪が降り始めた。途中5〜6人の登山者と会ったが、頂上では何も見えないことであろう。わずかの時間の差なのに気の毒な気がした。30分ほどで六方石に着くと、5人パーティーが天候悪化のため引き返しはじめていた。視界が悪くならないうちに下りようと先を急ぐあまり、往路では巻いたコブ
を直登してしまう(トレイルがあった)。短い岩場だったがやや歩きにくかった。やせ尾根を通過し、少し急な2752m峰を登れば駒津峰は直ぐだった。
風はあまりなかったが、視界は確実に悪くなっており四方の山は全く見えなくなっていた。樹林に入って一息つく間もなく先を急ぐ。当の本人は急いでいるつもりだが時計をみるといっこうにペースは上がっていない。アイゼンが邪魔なので外して一気に駆け下りた(気分的には)。仙水小屋12:40分到着。中に入ってみると小屋番の人たちがストーブを囲んで昼食をとっていた。お餅とぶり大根をごちそうになり、正月気分を味わうことができた。
雪は大した降りではないが一向に止む気配がない。明日の下山が少し心配になった。手持ちぶさたなので、ザックの中をあさってみると行動食、つまみ等がごっそり出てきて、ささやかな宴会となる。今晩は二人だけだと思っていたら、3時頃に8人パーティーなどが到着して小屋は昨日と同じ総勢11名となった。

[1/3(日);仙水小屋〜戸台]曇りのち晴れ
今日甲斐駒に登る人たちを見送った後、2泊お世話になった仙水小屋を後にした(7:05)。当初は2泊目を長衛荘(2食付、正月は8400円)にする予定であったが、1泊目に一緒だった人から「6500円のここの方が食事も良いし、暖かい」と聞き急遽連泊となった次第。今時この低料金で充実した食事やサービスを通年提供してくれるご主人の心意気がうれしかった。
さて、昨日の雪だが、歩き出してみると積もったのは5cm程度、心配は杞憂に終わった。長衛小屋前のテントは1/5位になっており、正月休みの終わりを感じた。往路を戸台目指してひたすら下山する。大平山荘から次の南ア林道と交差する所の間に、新雪が載ってやや滑りやすい部分が見られたが、他は行きと変わりはなかった。
丹渓山荘の下を歩く頃から入山者と出会うようになり、戸台の駐車場に着いた時にはまだ30台程の車が止まっていた(10:16)。

中央道を走っている頃にはすっかり天気が良くなり、伊那側からは昨日登った甲斐駒ヶ岳が端正な三角錐の姿を現して見送ってくれた。


雪山ハイクへ
山の手帳へ

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