表妙義の稜線歩きは、西岳までは行ったことがあるものの、その先の星穴岳は「ルートファインディングが難しく危険」という噂に二の足を踏んでいました。ところが、近年クライミング入門者を対象としたガイドツアーが定期的に入るし入山者も多くなったとのこと。また、流石にもうアブは出ないだろうということで、例年なら雪見登山に行く季節ですが、今年は趣向を変え、紅葉の星穴岳へ行ってみることにしました。 |
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中之岳神社〜主稜のコルは、表妙義縦走路(主稜のコル〜金洞山〜茨尾根〜相馬岳〜白雲山〜奥の院)のアプローチと同じ。
(左)まずは中之岳神社長い石段を登る。 (中)中間道との分岐にある案内図。 (右)主稜のコルへ至るルンゼ(鎖あり) |
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コルより左(西)へ進み、樹林に覆われた登山道を少し歩く |
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続いて下り傾斜、5〜6mのナイフリッジ(フィックスロープあり)を渡る |
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西岳直下のスラブ(V):@右上気味にトラバースして巻き上がるかA直登。今回は直登した。 |
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実際に歩いてみると、主稜のコル〜星穴岳は、かつての登山道がかなり再生されていて(踏跡が明瞭になりつつある)、ルートファインディングは然程難しくはありませんでした。
多少分かりにくいと思われたところは、@西岳頂上からの進路、A西岳と次の二連岩峰との鞍部への下降路、B星穴岳のピークの特定でしょうか。
@は星穴岳が見えていればそちらの方へ続く尾根道を下降すればよいですが、夏等薮のうるさいときや視界が悪いときは要注意。
Aは西岳の西端からの下降が垂壁となっており、これを避けるため、その手前から北面の浅い沢型を下降、西端の岩峰を北面から巻いて鞍部へ下りるように踏跡が付いていました。
沢型の下降はかなり急なため懸垂下降しました(25m・立木にスリングが多数かかっており下降点はすぐ分かる)。30mくらい下りたところから、西方へ続く踏跡がありこれを辿ると当該岩峰の基部に出ます。そこからちょっと不明瞭で、そのまま西へ進むと急な崖状(かつて一般道があったようには見えない)、少し引き返し、右(北)の立木に脱色したテープを見つけてホッとしました(樹林の中に明瞭な踏跡が続いていた)。
Bは、二連岩峰の次のピークが星穴岳。最後に東側直下からV・5m位の岩登りがあります。到達した頂上は薮に覆われた東西に細長いもの、そこから顕著なピナクルを擁する尾根が北側へ延びていました。後続パーティーの中に、さらに西の一段低い岩峰を指差して「向こうが星穴岳」と主張する人がいましたが、そのパーティーのリーダーが持っていたGPSは、やはり今立っているピークを示していました。残念ながら北面に投影された山影では星穴を確認できませんでした。 |
岩場はV程度のごく短いものが何箇所かあるものの、もし、表妙義縦走路に鎖がなければ、ここより難しいくらい。ただ、西岳直下と星穴岳直下の垂直に近い岩場は、ロープを出すかちょっと迷うところ。後者は、下降もしなければならないので確保して登りました。 |
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沢型を下降後西へ進む踏跡を辿るとこの岩峰の基部に出る |
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基部の右(北)の潅木帯に踏跡が続いていた。赤丸のところにテープあり。 |
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岩稜南側の細いバンドトラバース(2箇所あるうちの最初のもの) |
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西岳山頂からも確認できる星穴岳手前の2連の岩峰
この辺りから岩稜に絡みながら左側の岩峰の南(左)側基部へ向かって道が続いていた |
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2連の岩峰の南東基部にある岩屋
ここから左(南)に出て2度目のバンドトラバースとなる |
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2連の岩峰南側基部のトラバース
左手に星穴岳から延びる岩峰群が見える |
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トラバースが終わり、岩場を一段登ると星穴岳との鞍部(痩せた岩稜)に出る |
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痩せた岩稜に上がるとすぐ懸垂ポイント
ここは射抜き穴の真上に当たる |
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潅木のある岩稜を少し西方へ進むと急な岩場のある岩峰(星穴岳)が現れた。
ずっとコンテで歩いており(既にロープを出していた)、ここはビレーして登る。転滑落は致命的なので下りは懸垂下降が無難。 |
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荒船山と八ヶ岳連峰(最奥) 谷急山(手前)と浅間山(奥) |
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このルートへ行く人の多くは星穴見物の方が主目的だと思いますが、星穴(射抜き穴と結び穴)は岩稜の下にあるため、その見物には稜線から懸垂下降することが必要となります(後述の@から下降する場合50mロープ2本必要)。今回は、星穴岳の登頂は順調だったものの、星穴へのルートファインディング(懸垂ポイントの特定)で手こずりました。
それは、第一に、星穴には「射抜き穴」と「結び穴」の二つがあることは知っていたものの、その位置関係を理解していなかったこと。第二に、懸垂ポイントが2箇所あり(@二連の岩峰を巻き岩稜に上がった地点とAその西方の星穴岳直下)、両懸垂ポイントと星穴との関係が分からなかったからです。特に後者は、安易に下りて間違っていた場合、登り返せるか不安で(∵ネット情報では空中懸垂になるような岩壁を下りる)、@Aいずれから降りるべきか大いに悩みました。幸いアッセンダーを持っている後続パーティーがAの方を偵察してくれ(助かりました)、@であろうと判断できましたが、私たちだけだったら星穴見物はお預けになるところでした。 |
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「射抜き穴(小さいほう)」は「結び穴(大きい方)」より東側の一段高いところにあり、@は「射抜き穴」への懸垂ポイント。 |
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「射抜き穴」までは@より40mの懸垂下降(下部は空中懸垂となる)。 |
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「結び岩」は射抜き穴より星穴岳寄りにあり、位置関係で判断すると、Aからも行けそう(未確認)。 |
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「射抜き穴」経由で「結び穴」へ行く場合は、「射抜き穴」の南側の大テラスより懸垂下降し(40m)、降り立ったところの西側の急なルンゼを登り返す。 |
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支点や残置スリングの状態から、@から下降する人が多そう。 |
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射抜き穴への懸垂下降40m |
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射抜き穴(人が立って潜れる) |
射抜き穴の南東の壁にある懸垂支点
右の立木を支点とした方がロープの回収が容易 |
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結び穴は射抜き穴より西方にあり、降り立った所から西側のルンゼを登り返す(左画像)。
現れた結び穴は巨大なものでそのスケールに圧倒された(中及び右画像) |
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今回の計画では、星穴見物後の下山のルートファインディングが本当の核心でした。射抜き穴直下まで戻り、所々あるテープや切れ切れの踏跡を参考に(必ずしも最短ルートではない)、稜線南側の尾根や涸沢をトラバースして中之岳神社を目指します。コンパスで確かめながら東へ東へと進んだつもりが、何時の間に南側の沢沿いに引き込まれて、中之岳神社より50m低い車道(県道196号)に出てしまいました(中之岳神社の駐車場まで15分の車道歩きとなった)。 |
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