二子山西岳1峰中央稜(西上州)
2011年11月21日(日帰り)
その1
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ちょっとバリエーション 
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二子山西岳T峰中央稜再登2013年4月 
【はじめに】
 二子山西岳1峰中央稜へ行ってきました(ルートグレード3級下・7P・最高ピッチグレードX〜X+(5.7〜5.8)。
 二子山は、石灰岩から成る傾斜の強い岩場で、一般人には無縁の高難度のフリークライミング(スポートクライミング)のルートが多数拓かれています。昔からある南壁のマルチピッチルートも日本登山大系等古い文献にあるものはほとんどがエイドクライミング。その中にあって西岳1峰中央稜は、フリーの初級ルート(ミニアルパインルート)として、大抵の新しいガイド本にも紹介されており、『日本マルチピッチ』では『初心者にも取り付きやすい貴重な1本』とのこと(∵相対的に困難な下部岩壁の支点が整備された)。
 ただ、標高が低く夏は暑いし(1000mくらいで虫も多い)、岩質の特性上染み出しのある時期は登攀が困難になることから、快適に登れるシーズン(4〜5月,10月下旬〜12月上旬)の週末はとても混雑するのが難点。
今は丁度ベストシーズンに当たり、万年初心者の私たちとしては、後ろから煽られるのは嫌なので、平日にトライすることにしました。 
 
 実は、このルートは10年前に挑戦するつもりでした。夏からトレーニングして、そろそろ行けるかなと思った矢先に私が足首のじん帯を損傷。予定を3週間延期し、偵察に上部(大テラスの上)だけでもと出かけたものの、やはり足の状態が思わしくなく最初のピッチのみで断念、その後、クライミングを中断したため未だに果たせない課題となっていました。 

【山行記録】

11/21(月)晴れ

1.アプローチ
自宅(横浜)4:25==(第三京浜・環八・関越道(練馬IC5:14)/途中休憩30分)==>花園IC6:28==(国140号・皆野寄居バイパス・県44号・県37号・国299号)==民宿「登人」(林道入口)7:33==股峠北側直下の駐車場7:48
股峠北側直下の駐車場8:05--股峠8:11--坂本・ローソク岩の分岐(ローソク岩方面へ)8:14--祠エリア8:16--(8:17〜42道迷い(注1))--中央稜取付への踏跡入口(注1)8:42--中央稜下部取付8:51
(注1)中央稜の取付へ至る踏跡
取付へは、祠エリア(フリークライミングのゲレンデ)を過ぎ、一般道(ローソク岩方面)を少し下ったところから、
(1)股峠まで
 今年は10年前から果たされていない2つの目標(本コースと小川山の長〜いスラブ(初心者ルート))のうち一つは片付けようと、真面目に練習したつもりだったものの、一向に自信が持てるようにならず、何時の間に11月も半ば過ぎ。登れなくなる前にと当初は小川山へ行くつもりでいたが(1泊2日)、冬型の予報に妻が難色を示すし、給水施設等も既に使用不可と判明(金峰山荘営業終了)、廻り目平より標高の低い二子山へ出かけることにした。
万が一に備え冬タイヤに交換したり、慌てて情報収集したりで、日曜は夜まで準備にかかり、睡眠不足のまま月曜早朝に出発。
二子山は、一般道の走行距離が長いし、国道140号から国道299号に入るまでの県道の部分がちょっと分かりづらく(今回も迷った)、実際より遠く感じる。
 
 県道や299号は山間部に入ると幅員が狭く所々対面通行の箇所はあるし、外気温がどんどん下がり心配になったが(車載の温度計の最低値は2℃)、幸い凍結箇所はなかった。民宿「登人」のところで右折して299号から舗装林道に入る、すぐに二子山登山口があり(ここから股峠まで約1時間)、数人のハイカーが路肩に車を止めて準備していた。
 歩くのが目的でなければ、股峠へは林道をさらに15分ほど走り股峠の北面直下の登山口(10台程度止められるスペースが2箇所ほど近くにある)から登るのが近く、私たちは、勿論そちらから。ただ、この林道は土砂崩れが多発するらしく、今回を含め過去3回とも補修工事中だった(通行は可能)。
駐車スペースには既に1台止まっており、クライマー2人が股峠へ登っていくのが見えた。
股峠北側直下の登山口 西岳案内板(股峠) 股峠の道標
(2)中央稜下部の取付
 股峠は、登山口から一般道を5分ほど登ったところ、樹林の中の広場には立派な案内板が立っており、右手は西岳、左は東岳、正面(南)は坂本へと、今登ってきた道を含め、四方に一般道が分かれている。
 中央稜の取付へは、まず、坂本方面へ少し下り、右に分かれる「ローソク岩」方面の道に入る。程なく現れるハング気味の岩壁(フリークライミングルートが拓かれており小さな祠が祀ってある(「祠エリア」))の前を過ぎ、急坂を下ると(フィックスロープあり)、右手の樹林の中に比較的明瞭な踏跡が続いており、これを登る。
 踏跡入口は「魚尾峠とローソク岩の分岐(道標あり)」より手前で、少々分かりにくいので注意(私たちは見落として当初「ローソク岩」方面の道を登ってしまった)。
  踏跡を3分ほど登ると潅木の多い崖の下に出る。ここには『防火用水』と書かれた赤い石油缶が置いてあり、ネット情報の取付の目印の『防火用水の赤いドラム缶』と紛らわしかったが、ここではなく、さらに3分ほど左上して現れる垂壁に面した小広場が本当の「中央稜下部の取付」だった。広場には確かに、『第八分団防火用水』と書かれた赤いドラム缶が置いてあった。
 
 ちなみに、この踏跡はさらに左上するとローソク岩方面の一般道に通じているらしく、「踏跡入口」を見落としても、戻ることが可能なようだ。
取付では、登山口付近で見かけたクライマー2人が準備をしていた。
この道標からローソク岩方面へ 祠エリア 中央稜下部の取付(赤いドラム缶が目印)

2.中央稜登攀

(1)中央稜下部(参考文献4の『クラックルート』)

中央稜下部取付(広場)8:51/9:20L発(準備・順番待ち)--中央稜下部登攀--大テラス(下部終了点=4P目取付)11:26F/52L(大休止)--中央稜上部登攀--中央稜終了点13:35F/54--T・U峰の鞍部(西岳一般コース下降点)14:00--西岳U峰(本峰)14:07/42--股峠15:07--駐車場15:12

1P目
中央稜下部取付9:20L発--(凹状フェース〜斜上バンド/30m/*W+)--ピナクルテラス(2P目取付)9:48F着/55L
(*)ピッチ最高グレードは文献2のものを採用した(他の文献のものは2ページ目の末尾の表を参照)。
 ドラム缶が置いてある辺りは、圧倒されるような被った岩壁、いったいどこを登るのかと思っていると、先着パーティーが取付いたところは、左の浅い凹状の崖でほっとした。
 先行のフォローが見えなくなり少し間をおいてからこちらも私のリードで1P目に取り掛かる(私が奇数ピッチ、妻が偶数ピッチをリードする「つるべ」)。
 ガイドブックでは下部はVと舐めていると、ホールドは確かにガバであるが、足はツルツルした感じで決まらず、出だしから手登りになって不安なスタート。ピンはピトンで中には今まで見たことのないような肉厚のものもあった(カラビナをかけるのが困難)。一段上がったレッジにペツルのボルトで終了点が作ってあったが、ピッチを切ると上のラインの観察には不利なため、もう少しロープを伸ばすことにする。
 この先は右手のフレーク状の岩を手がかりに右上バンドへ上がり(このピッチの核心)、これを渡った先の立ったリッジの下がルート図にある終了点だった。なお、核心部は高度感のあるスラブ状で、朝一にはちょっと手強かった(W+)。
1P目
2P目
ピナクルテラス9:55L発--(スラブ〜カンテ/25m/X-)--凹角下のバンド(3P目取付)10:24F着/33L
 2P目は、オリジナルルート(凹角)ではなく、その左の、少し傾斜のある膨らんだスラブ状のリッジを登った(文献2に紹介されているもの)。ここは中間部にあるレッジから右上し、続くカンテを終了点のあるバンドまで登る。1本目のピンにクリップするまでホールドが乏しく、リードの妻も慎重に登っていた。
 レッジより上は、それまでのラインを進むと(左上すると)ホールドがなくなり戸惑う。よく見ると右手にガバが見つかり、その方向に折り返せば(右上すると)ホールドが多く容易になった。
 なお、2P目〜4P目は中間支点もペツルのボルトとなっており安心。
2P目
3P目
凹角下のバンド10:33L発--(凹角/35m/X〜X+(5.7〜5.8))--大テラス(下部終了点=4P目取付)11:26F着/52(大休止)
 3P目は『ルート全体の核心』、かつてはエイドクライミングで登られていたようだ(W・A1(文献5))。不慣れなレイバックで登る凹角ということでかなり緊張していた。ただ、所詮5.8、今年は人工壁や小川山のショートルートで多少レイバックの練習もしたし、また、普段利用しているクライミングジムのA.Oさんの「ボルトルートで最悪A0なら絶対登れるから」という言葉を信じて取付く。
 このピッチは、クラック沿いを忠実に登るのだが、下部は左の縦ホールドのほかポケットがガバになっており、ほとんどステミングで対応できた。ペツルのボルトのほかピトンも多数あり、ダブルロープでも中間支点が足りないということはなかった。
 
 中間部からはレイバックを交えての登り、クリップにもたつき腕が疲れてくる。左足をクラックに突っ込んでフットジャムが決まるとレストできることが分かってからは落ち着いたものの(ハイドレーションシステムのお陰で水を飲むことも出来た)、左頭上に岩が覆いかぶさった箇所で行き詰る。すぐ手前にペツルのボルトがあるのはありがたいが、クリップ後の数手のムーブが分からなかった。
ここは、レイバックでは越えられそうになく、左の手足はクラックにジャミング、右は凹角右壁のカチホールド(手)とスメア(足)で突破を試みたが、上体が上がるとジャミングできなくなり断念。結局、フレンズ(#3.5)を入れて手がかりにしA0で突破した。
 その先はホールドも多く傾斜も緩く容易、大テラスの立ち木に終了点を作り妻をビレーする。途中までは順調だったが、妻も核心部で足が止まり意外に時間がかかった(やはりA0になったとのこと)。
3P目
 正面の岩壁を見上げると、先行パーティーは一段上の5ピッチ目に取り掛かるところ、当初はそのまま登るつもりであったが、妻の息が上がっているし、私も3ピッチ目で二の腕が痛くなっており、少し早いが、ここで昼食をとる事にした(終了点の大テラスはテント数張り張れるくらいの広さがある)。
 なお、大テラスは、中央稜下部の登攀の他、ローソク岩の脇から横断バンドを経て登ってくるルートもあるし、一般上級ルートの取付から西岳中段の南面へ伸びる踏跡からのアプローチも可能なため(10年前歩いた)、ここから中央稜上部のみの登攀も出来る。
【参考文献】
1.山と高原地図21西上州(昭文社・2003年版)
2.日本マルチピッチ・フリークライミングルート図集(菊池敏之著・山と渓谷社・2011年)
3.アルパインクライミング(遠藤晴行編・山と渓谷社2001年版)
4.日本100岩場A関東(北山真編・山と渓谷社・2009年)
5.日本登山大系
8八ヶ岳・奥秩父・中央アルプス(柏瀬祐之・岩崎元郎・小泉弘編・白水社・1997)
 
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