水無川本谷沢(丹沢)
その1

2011年3月31日(日帰り)
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【はじめに】

 水無川本谷(1級上・V)は塔ノ岳へ直接突き上げる沢、昨年のGWに支流の源次郎沢へ行くつもりで間違って入渓し途中まで遡行したことがあります。沢シーズンには少し早い気もしますがヒルの心配のない時期に登っておきたかったし、平日休みに日帰りで行くには近くて手ごろなので出かけてみることにしました。

【メンバー】夫婦2人

【山行記録】
0.入渓点まで
戸沢山荘8:05〜入渓点8:16
 東日本大震災による混乱も少し落ち着き今日は計画停電も中止、ガソリンスタンドも半分ほどは営業しており給油も然程支障は無かった。東名高速(青葉IC〜秦野中井IC)はあっという間だが下りてから時間がかかり(∵普通車のため8km位の林道が微速走行)自宅(横浜)から戸沢まで2時間くらい要した。
 駐車場には地元ナンバーでない車が3台止まっていたが既に出発した後らしく人影は無かった。軽く朝食をとり沢支度。毎度のことながら、もたもたしているうちに8時過ぎの出発となってしまった。
 源次郎沢のとき同様に、戸沢、次いで本谷沢を橋で渡り(@)、天神尾根へ向かう一般道を少し歩く。書策新道の案内表示のところ(A)から右に折れて源次郎沢出合の少し上流で同沢を渡って(B)本谷へ。
本谷沢は、源次郎沢出合のすぐ先の道標(C「源次郎沢入口・本谷F5近道」)からやや右へ入る踏跡を辿るとその右岸の川原に出ることができる(潅木混じりのゴーロ)。
@本谷沢を橋で渡る
 
      (左)Aの道標→案内図            (中)B源次郎沢を渡る       (右)Cの道標の手前から右の踏跡へ入る
1.本谷下半
入渓点8:16〜F1・F2・F3・F4・F5〜書策新道交差地点10:10/25
ルートイメージ
※地形図・参考文献2をベースにしていますが滝の位置等は正確ではありません。
(1)入渓点〜F2登攀
 川原に入って5分足らずで現れる堰堤(D)は右岸側(左)に鎖もある高巻道を登って越える。雨具の上下を着ているせいかこの頃から少し暑くなった。
Dの堰堤は右岸側に巻き
 堰堤の先ははじめは潅木混じりのゴーロ歩きだが、次第に巨岩が目立つようになり小滝をいくつか越えると前方に二条の滝(F1・10m)が現れた。滝番号(左岸)を確認し、F1は右岸の岩を小さく巻く様につけられた鎖場を登って越える。目の前は左岸側がセドノ沢出合(E「セドノ沢入口」の表示あり)、本谷側はすぐ先がF2(5m)だった。
D堰堤〜F1の様子
F1は右岸の鎖場を登った
F1を登ると左岸側はEセドノ沢出合だった
小さな釜のあるF2は両岸とも直登可能。水際を登る左壁(右岸)には古い鎖があり昨年のGWはこの鎖場を登ったのだが、その鎖が切れており代わりに新しいフィックスロープが付けられていた。→右岸の画像
他方、右壁(左岸)に目を転じると、こちらは滝から少し離れていて乾いているし、急だが階段状の乾いた岩場。ピトンも数箇所打ってあり、確保すれば問題なく登れそうだった。ウォームアップがてら今回は右壁を直登する。取り付いてみるとホールド・スタンスとも十分にあり難しくはないが、ピトンのある位置と穴の大きさの関係で既製のクイックドローは使えずスリングも細めのものでないと掛け難かった。
F2は左岸を直登(赤)
(2)F3登攀
 F2を過ぎてからしばらくは小規模な連瀑帯が続く。途中左右両側にある巨岩の間を落ちる2段7mの滝(F)があるが、左岸側の踏跡から容易に越えられる。ここは昨年その小さな釜に鹿の遺体があってびっくり仰天したところ、巨岩の下は2〜3人ビバーク出来そうな岩小舎となっていた。
 しばらくゴーロ歩きが続いた後、再び連瀑帯となる。程なくして、少しスケールは大きいがF2とよく似た滝(F3・8m)が現れた。
F2段の滝(7m)付近
 F3は、滝の手前の右岸側スラブから高巻道(鎖あり)があるものの、難路で(急斜面のトラバースあり)昨年通過した時は鎖の支点が傷んでいた。遡行図では左岸(右壁)も登れるとあり、今回は当初よりこちらを直登するつもりでいた(もちろんビレーして)。
 右壁も上部にお助けスリングが下がっていて登るラインは容易に分かる。F2と異なり下半分が濡れているし、最初のピンがやや遠いこともあってフレンズ(#2.5)で1本目のランニングビレーを取る。支点を取ってから数手は思い切って登れたが、中間部から上部に抜けるところで一箇所滝寄りの露出感のあるスタンスに立つ所があり、ちょっと怖かった。ここはホールドが外傾気味でオープンハンドで左(滝側)に重心移動することができず、ピンチでつまめるホールドを見つけるまで動けなかった。反対側(右)にスリングが下がっており右から登った方が容易だったのかもしれない。フォーローの妻も珍しくこの箇所はビビっていた。
F3は右岸に巻道(緑)があるが左岸を直登した(赤)
(左)(中)F3は左岸から直登                      (右)右岸の巻道上部の様子      
F4とGの滝 (3)F4〜書策新道交差地点
 続く2段の滝F4(8m)は左岸側のバンドにある鎖を利用して難なく通過。右岸から小さい沢が入る手前に現れる滝も左岸のスラブから容易に登れた(G)。さらに連続する2つの斜滝(4m)を過ぎると、F3よりスケールの大きいF5(9m)が現れる。
 F5は本谷下半(書策新道交差地点(870m)より下の部分を便宜上こう呼ぶことにする)では最大級の滝で水際を登るのは難しそう。鎖が設置されている左岸側の外傾バンドを登るのが一般的なようだ。この鎖場は長くて高度感もあり下部の支点はちょっとぐらついている。ロープは出さなかったが鎖にセルフビレーを取りながら慎重に登った。
F5は左岸のバンドに鎖がついている
F5の鎖場を登る  F5の落ち口から書策新道交差地点(H)は指呼の距離、伏流してほとんど水の無いガレ場を僅かに登ると手書きの標識のある登山道の前に出た。道標の脇にザックを下ろして一休み。これより先は未知の領域、装備の整理と地形図・遡行図でもう一度ルートのチェックをする。
HF5のすぐ先で書策新道が交差する
【参考文献】

1.山と高原地図「丹沢」(昭文社・1992年版及び2010年版)
2.東京起点沢登りルート120(宗像兵一編著・山と渓谷社・2010年)

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