霞沢岳・八右衛門沢
(北アルプス南部)
2010年10月10日-11日
その1偵察・八右衛門沢橋〜二俣
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 ちょっとバリエーション ウェストンの足跡を訪ねて 
山の手帳

【行程】
1泊2日(小梨平(上高地)幕営)
10/10(日)自宅(横浜)=沢渡大橋=上高地−小梨平−八右衛門沢偵察(八右衛門沢橋〜表六百沢出合)−小梨平(幕営)

10/11(月)小梨平−帝国ホテル前−八右衛門沢橋−八右衛門沢遡行−K2−霞沢岳−K2−K1−ジャンクションピーク−徳本峠分岐−白沢出合−明神−小梨平−上高地BT=沢渡大橋=自宅(横浜)

【メンバー】夫婦2人

【はじめに】
体育の日は、静かで紅葉も楽しめる山ということで八右衛門沢から霞沢岳へ登りました。
霞沢岳は、常念山脈の南西端に位置し、上高地の背後にひっそりと聳える不遇の名峰。その頂稜から北西へ一直線に落ち込んでいる急峻なルンゼが八右衛門沢(帝国ホテルの下方200mにガレの押し出しがあり稜線からの標高差1100m)、徳本峠からの一般道が整備される前は霞沢岳のもっとも容易な登路として利用されていました。
ウェストンも1913年8月に登っていますが、「この登攀は暇な日の登山や天気待ちの日の穴埋めのためには実に素晴らしいものである」と記しているように、その山行は直後に再登した奥穂南稜のトレーニングが目的だったようです。

最近の情報を入手しようとネット検索してみるも、ほとんどは残雪期の山スキーばかりで、無雪期の記録は奥穂南稜以上に稀少でした。しかたなく古い文献を見ると「経験者なら楽に登れる(稜線まで2時間半)」「霞沢、産屋沢遡行後の下降路」「八右衛門沢を登れないようでは霞沢岳の沢に入る資格はない」等々、裏読みすると私たち初心者にはちょっと厳しいルートなのかなという印象。経験者の2倍はかかるとみて稜線まで5時間くらい(霞沢岳まで5時間半)を目安として挑戦することにしました。

ちなみに、ウェストンはその著作の「日本アルプス再訪(水野勉訳)」によると、「登りは数回の休憩を入れて3時間45分かかったが下りはそれより1時間少なくてすんだ」とあり6時間半でこのルートを往復しているようです。

【山行記録】

10/10(日)曇り時々晴れ

. 八右衛門沢の偵察

自宅を早朝出発し9:30に上高地到着(中央道は比較的順調だった)、予報より早めに雨のあがった連休中日はやはり人出が多い。上高地をベースに登れる山といえば、明神岳・霞沢岳・焼岳くらいでいずれも人気という点ではいまひとつだからガラガラかと思っていたが、小梨平は意外にテントが多かった。中には大型のレジャーテントを肩に掛けキャスター付のスーツケースで荷物を運んでいるキャンパーもおり必ずしも山に登る人ばかりではないようだ。

水場に近いところにテント設営、晴れているうちにと、早々に八右衛門沢の偵察に出かける。

まずは、梓川河畔の散策をしながらウェストンレリーフへ向かう。バスターミナル付近では手前の岩峰ばかり目立つ六百山も大正池方面へ歩くにつれその堂々たる山容全体を望めるようになった。山は秋色進行中だが上高地は河畔のススキに気配を感じる程度。

ウェストンレリーフの前で記念写真を撮る。ここは対岸に霞沢岳が聳えており、特に八右衛門沢を眺めるには良いポイントだった。

六百山(左)と霞沢岳(右)
霞沢岳のすぐ左の沢が八右衛門沢
六百山に向かって左上する沢が表六百沢
  (左)ウェストンレリーフ                         (右)八右衛門沢橋        

田代橋を渡り帝国ホテル前からバス道路を中ノ湯方面へ、古い文献では「笹の中に八右衛門沢へ至る踏跡がある」記されていたが見当たらず、程なくガレ沢に架かった橋に出た。八右衛門沢橋と表示されておりその左岸沿いに林道があった。

車止めのゲートを越え15分ほど歩くとガレ沢に出る(林道終点)、レンガ色に塗装された鋼管でできた工作物があり、右岸側のすぐ先で表六百沢(涸れ沢)が出合う。

(左)林道終点の工作物            (右)表六百沢出合:@表六百沢A八右衛門沢

時間があるので右手の八右衛門沢を少し登ってみる。所々だがかすかな踏跡が残るガレ場歩きで次々と堰堤が現れる。大抵は左右いずれかの脇から容易に登れ、段差があるところには巻き道があった(テープ・踏跡あり)。
高度計の読みで1650m付近より、ちょろちょろ程度の水流が現れる。雨が降ったのだから当たり前なのだが、涸れたルンゼ登りに終始すると思っていたためちょっと面食らった。今日降らなければ沢登りのようになることはないだろう。大体の様子は分かったのでここから引き返すことにした。

八右衛門沢の地図(参考)
10/11(月)曇り時々晴れ
1.八右衛門沢橋〜三本槍沢出合〜二俣

小梨平(テン場)4:40--帝国ホテル前5:00--八右衛門沢橋(1520m)5:05--(左岸脇の林道)--表六百沢出合(1610m林道終点・注1)5:17--(堰堤の連続)--標高1670m地点5:35--(水流のあるゴーロ帯)--地点左岸最初の沢との出合(1830m)6:20/32--(チョックストーンのある涸れ滝が連続・これ以降稜線までロープ使用)--三本槍沢出合(1890m)6:55--(涸れ滝・巨岩帯)--二俣(2200m)8:50/9:03

2時半起床。今日は霞沢岳往復後帰らなければなければならないので、アタック準備とともにすぐに撤収できるようテントを除いた装備を大型ザックにパッキングした。

今日の行程は10時間くらいとみてヘッデンの灯りを頼りにスタート、八右衛門沢橋には5時過ぎに着いた。昨年同時期、明神岳主峰東稜に登ったときはもう晩秋という感じだったが、今年はやはり季節の進行が少し遅れているようで、防寒具がわりの雨具が少し暑く感じる。
下見どおり八右衛門沢へ下りてからも概ね左岸(右)寄りに歩く、堰堤を登ったり高巻いたりして昨日の引き返し地点までは橋から30分、漸く少し明るくなる。
この後水流が現れるも飛び石伝いに容易に渡れる程度、しばらくは緩い川原歩きが続く。

最後の堰堤を登ってからは、いままであった踏跡が途絶えた。ゴーロ歩き〜巨岩帯が続き、時折チョックストーンの詰まった涸れ滝(巨岩の間に岩が詰まって滝状になっており多くは水流がない)も現れる。源次郎尾根(剱岳)のルンゼルートに似た雰囲気だが、@涸れ滝の数が数倍多い、Aチョックストーンは容易に動きホールドとして信頼できない、B高巻きも困難な点で八右衛門沢の方が難しく感じた(途中からロープを出した)。

ここは困難な登りがあるというより、むしろ直登・高巻きの判断に悩むことが多かった。経験者なら瞬時に分かるのだろうが沢系の経験に乏しく時間がかかった。いくつかある10m以上の明らかに困難なものは当然高巻きだが、問題は微妙に難しそうなところ。このような所では巻き道(道というような踏跡はない)もグズグズの急斜面で歩き難く、大抵はリードがバイルを刺して登り、フォローを肩がらみで確保(隔時登攀・バイルは1本しか持っていなかった)しなければならなかった。

左岸から顕著な沢(標高1830mくらい)が入ってきて悩むこともあった。左が本流に見えるのだが、古い文献では「右へ右へと進めば間違いない」というような主旨のことが記されていたからだ。このときは地形図でその沢を特定できたため事なきを得た。

       (中)左岸の沢との出合  (右)出合付近:左の八右衛門沢を登っているところ

次々と現れる巨岩や小滝を登ったり巻いたりしていると今度は右岸側に沢(三本槍沢)が現れる、ここは、水流のない右の本谷を登った。

(右)三本槍沢出合:@三本槍沢 A八右衛門沢

三本槍沢出合からは、岩がさらにスケールアップ、「機関車ほどの大きさの岩(文献2の表現)」のある巨岩帯となる。右岸からクライミングルートもある峻険な岩壁が迫ってきてゴルジュのような様相となった(水はないが)。振り返ると上高地の上に穂高の一角(西穂〜天狗のコル)が見えるようになっていた。

巨岩帯
その2へつづく 
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