奥穂高岳南稜
(北アルプス南部)

2010年9月2日-4日
その2奥穂高岳南稜登攀
→その3
その1←
【山行記録(つづき)】

9/25(土)曇り時々晴れ・夕方まで霧

3.南稜ルンゼからトリコニー基部へ
岳沢テン場6:02--滝沢出合6:15/37(準備等)--(雪渓)--滝沢右岸6:43/53--南稜ルンゼ取付7:03--3m小滝(10mロープ・スタカット)7:09〜20--2m*3段の小滝7:22〜43(コンテ)--中間部三叉路7:58--(中央ルンゼ)--「下の岩壁(ルンゼ・ツメ直下)」取付8:43/9:05--(15mスタカット)--1P目終了点9:50/55--(ハイマツに覆われた急な岩場(踏跡なし)・30mスタカット)--2P目終了点(右支稜上)10:37--(草つき〜ハイマツ混じりの急な岩場(踏跡あり)・コンテ)--トリコニーT基部11:15
(1)南稜ルンゼ〜「下の岩壁」 
未明は少し風が強まったものの雨は降らなかった。稜線だったら大変だったろうが谷間のテン場だったこともあってドームツエルト・ツエルト用タープでも何ともなかった。もっとも心配であまり眠れなかったが(スリーシーズンシュラフ持参のため寒くはなかった)。
4時半起床、準備を整え軽く朝食を摂る。
ビバーク装備(三角ツエルト・シュラフカバー・予備食)・行動食・水(二人で5L)登攀具・ロープ(9mm*10m,同30m)・アイゼン(12本アルミ)・バイル(1本)等を詰めたザックは結構重く感じる。風もなく台風の影響はほとんどなさそうだ。6時になってもガスっていて薄暗いためヘルメットにヘッデンを付けてはみたものの登りでは使用しなかった。予想通り南稜を登る人は他にいない様子。歩き始めからどうも腹具合が今一つ、たまらず滝沢出合でトイレ休憩。ここで登攀具を着けアイゼンを履いた。
 視界は悪いが昨日の偵察が奏効し取付まで不安なく歩けた。
南稜ルンゼ取付まで
雪渓を右岸に渡り、右岸沿いに浮石だらけのガレ場を滝の落ち口まで登る(左画像)。
さらに、見事な柱状節理の右支稜側壁までトラバースし(中画像)、右支稜に沿ってルンゼを登る(右画像)
3m小滝(V)は10mロープで確保して登り(スタカット)、続くスラブはそのままコンテで歩く。2〜3m*3段の小滝の下部はクラック沿いに、一番上は右寄りの急な草つきを登った(V・スタカット・バイルが有効)。
下の小滝〜スラブ
上の小滝〜ガレ場歩き
10分ほどガレ場を登ると次第にガスが切れる、眼下に滝沢の雪渓・岳沢のテン場・上高地と来し方の視界が開けた。     →六百山と霞沢岳の画像
苔むした岩場を登ると程なくルンゼが三分する(いずれにも踏跡あり)。今回はツメにある30mの凹角(V?)を登るつもりなので、最短距離に見えた真ん中のルンゼを歩くことにした(これは失敗、注)。
3つのルンゼの分岐点付近
中央ルンゼは、草つき混じりのガレ場。登るにつれ急になる。頭上にはツメのスラブ状岩壁(右支稜と合する直前の左支稜の側壁で以下「上の岩壁」と呼ぶ)が間近に見え、一段下にそれより小規模な垂壁(高さ5〜10m・70〜80度・以下「下の岩壁」と呼ぶ)が現れた。  
さらに中央ルンゼと「下の岩壁」との間には45度くらいのスラブが横たわっており、濡れているしホールドが乏しく見た目がいやな感じ。少し遠いクラックにバイルのピックを引っ掛けて何とか通過する。肩がらみで確保して妻を迎える。 
注:帰宅後読み返した文献2によると、
@3つに分かれたルンゼは左ルンゼを登ってツメのスラブ状岩壁基部へ上がる、A岩壁基部を右へトラバースしてブッシュの切れ間から右支稜に登る、B右支稜は直登せずに一旦滝沢側(右)のルンゼに降りこれを登った後、尾根へ戻る、と薮漕ぎの労力を軽減することができるとのことです。

@については、今回現地で観察したところ最短距離なのは中央ルンゼですが、前述のとおりツメまでの間にもう一段岩壁があって無雪期はこれを登る必要があります(残雪期なら段差がなくなって容易かも?)。この点、左ルンゼを辿ればツメまで草付の登りでロープを出すようなところはなく、効率的なルートに見えました。

ルンゼのツメの全貌
@上の岩壁          A下の岩壁          B濡れたスラブ
(2)「下の岩壁」登攀〜右支稜〜トリコニー基部
振り返ると左ルンゼの方が「上の岩壁」基部まで簡単に行けたようだがもう後の祭り。「下の岩壁」基部まで登ってしまうと、ほとんど手がかりがないまま滑りそうなスラブをトラバースしなければならないからだ。
「下の岩壁」は左側が少し低いが(5〜6m)無雪期は登られていないようでピンはない。狭いバンドを右へ移動してみると、高さ8m位・フレークのあるスラブ壁にピンが見つかった。
ここは左右の支稜の接点より少し右側に位置し、さらにスラブ壁の上のブッシュの多い岩場を登れば右支稜に至る。30m凹角はまたお預けとなるが、トリコニーT峰に登るには、どの道右支稜に上がらなければならず、かえって好都合かもしれない。そして何より、下から見た限りでは難しくなさそうだし、ちょっとクライミングっぽくて冒険心をくすぐられた。ところが・・・・。
フレークのあるスラブ壁の画像 上の岩壁(2P目取り付きより)
1P目フレークのあるスラブ〜凹角 2P目急な階段状岩場〜薮の急斜面
取り付いてみるとやや細かいが下の方はVくらい、少し古いが3本のピンは効いていて確かにそこまでは難しくなかった。
問題はその先の3mくらい、ほぼ垂直な凹角で、ぱっと見ホールド・スタンスはほとんど無し。
左のカンテを持っただけではステミングできないし、スメアで登るには急すぎたコーナークラックがあるのでジャミングをマスターしていればば容易だろうが・・・・。 
目いっぱい手を伸ばしクラックにフレンズをセット、これを掴んでA0登攀を試みるもやはりダメだった。
ロープにぶら下がりレストがてら偵察、左壁にガバを見つける(このガバだけではやはり登れなかった)。クラックを使ってレイバックで身体をずり上げ、何とか凹角出口にガバがあることを確認する(このときはパンプして落ちた)。
しばらくレスト後、同じ要領で出口のガバを取って左壁に回ってガバに立ち、漸く凹角を突破することができた(核心部はXくらいに感じた)。さらにハイマツ混じりの岩場を5〜6m登り、立ち木でピッチを切る。
外岩は苦手な妻は大丈夫かと案じたが、凹角下からすぐに左壁に出てガバを両手で掴みスメアで登ってきた。フォローとはいえあっという間だった。
2P目は、薮の多い急な岩場(70度くらい)〜急なブッシュ帯の登り(60度くらい)の登りで妻がリードした。薮が酷ければ無理をせず左に下って「上の岩壁」基部に出るように指示したが伝わっておらず、妻は岩場の先のハイマツの海をもがきながらも強引に登ってしまう。ここは足が地面につかないほどブッシュが密集しており、その上に乗って枝を掴んで身体を引き上げる(ゴボウ)、腕がパンプ状態の私には厳しくロープを引いてもらわなければ登れなかった。  
2P目の終了点は右支稜上ではあるが、この薮では直登するのは愚策。辺りを見回すと右方(滝沢側)にやや薮の薄そうなところが帯状に続いている。ブッシュ掻き分け行って見ると草つき混じりの岩場で予想通り踏跡もありホッとした。一時青空も見えることもあったがすぐにガスって視界が悪くなる。
急な草つきや段差のある岩場登りがしばらく続いた後(注)、巨岩の点在するブッシュ帯となる。幸い今度は岩と岩をつなぐように踏跡がありこれを辿ると大分楽だった。
ブッシュ帯を抜けると緩傾斜の草つきに出る。時折ガスの切れ間から頭上間近に見覚えのある岩峰が覗く、どうもトリコニーの基部のようだ。
右支稜の登り〜トリコニー取り付き
→その3
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 ちょっとバリエーション ウェストンの足跡を訪ねて 
山の手帳

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