花のある岩場
小同心クラック
(八ヶ岳横岳西壁)その2
2010年7月26日〜27日(赤岳鉱泉幕営1泊2日)

 その1  その2
ちょっとバリエーション 
山の手帳 
GWの小同心クラック(2014年)

【山行記録つづき】

P目(U〜V・10m強):肩L1132--小同心の頭F1140

妻リード。肩から緩いフェース〜浅い凹角を少し登るとあっけなく小同心の頭に出た。ここでもこぶし大のホールドが抜けてヒヤリとした。

頭に着くと妻の第一声は「ルート間違ってないよね。何かあっけなかったね」。ここまで取付から1時間半、フラットソールとはいえ不慣れなダブルロープで登ったことを考慮すれば、私たちには上出来か。

小同心の頭へ 大同心の頭・硫黄岳・蓼科山(小同心の頭より)

小同心の頭1152--横岳主峰直下1202/10L発)--横岳主峰(奥の院)F1218

小同心の頭の先は横岳主峰直下の岩場まで踏跡のあるやや細めのリッジ歩き。冬ならコンテかもしれないが、一般ルートと大差なく、頭でロープをたたんだ。

途中の岩場にウルップソウが咲いていた。手の届くところにあり花の色も私のイメージとは違っていたが、そのひっそりとした佇まいが妙に印象に残った。

主峰直下はV程度の岩場で出だしがちょっと急な感じ、念のためビレーして登る。ここにはピンがたくさんあり冬登るなら心強いかもしれない。

横岳主峰へ向かう
横岳主峰(小同心の頭より) ウルップソウ 途中にあった岩小舎
横岳主峰直下の登り
主峰直下は再び岩場となる。
背後は小同心右岩峰(左)と登った左岩峰
主峰直下の登り(取付から) 主峰(奥の院)直下の登り(頂上より)

()横岳散策等

横岳主峰(奥の院)で大休止。登攀具をしまい昼食を摂る。
すっかり晴れて、赤岳・阿弥陀岳の展望が素晴らしい。この2座は八ヶ岳のジャイアント、横岳の個々の小岩峰とはやはり山の格が違うと感じた。→横岳〜赤岳の主稜線
まだ時間も早く天気も持ちそうなので、後はのんびり花の稜線歩きを楽しむことにする。ただ、その場合硫黄岳方向、地蔵尾根方向のいずれから下りるかが問題となった。というのも両方向から縦走してきた人によると、硫黄岳方向はコマクサの群落があり、地蔵尾根方向にはいろいろな種類の花が咲いているとのこと、どちらも魅力的に聞こえたからだ。さらに、石尊稜の偵察や(地蔵尾根方向)、大同心稜(硫黄岳方向)の降り口の確認もしておきたいし、大いに迷ったが、空身で台座の頭(硫黄岳方向)辺りまでピストンした後、地蔵尾根を下りるという折衷案で解決することにした。

まずは、奥の院の鎖場梯子場を下って大同心の頭の上へ。稜線にはロープが張ってあったが、大同心の頭から続くものと大同心ルンゼの源頭からと思われる明瞭な踏跡が確認できた(大同心稜ルートは後者の方か)。
この辺りは高山植物の女王と呼ばれるコマクサが見ごろとなっており、その可憐な姿と男性的な大同心の勇姿とが好対照だった。コマクサは大同心付近のほかその先にも所々見ることができた。

横岳主峰(奥の院)周辺に咲いていた花
奥の院周辺の花
チシマギキョウ ミヤマキンバイ コマクサ
小同心 コマクサ 大同心
横岳主峰〜小同心 三叉峰へ向かう 三叉峰の下りから石尊峰・日ノ岳

奥の院に戻り今度は地蔵尾根方面へ。妻は花専門、私は地形図とピーク・尾根・ルンゼの照合を担当し、それぞれ写真を撮りながら歩く。
石尊稜は鉾岳直下のトラバース道がよい観察ポイントだった。春敗退を決めた小ピークも確認でき上部岩壁の様子を中心に写真を撮った。
花の方はコマクサ(三叉峰)、チシマギキョウキバナシャクナゲタカネツメクサコバノコゴメグサ(石尊峰)、ミヤマダイコンソウ(鉾岳直下)、タカネツメクサタカネニガナイワオウギチングルマミネウスユキソウ(日ノ岳周辺)と確かに様々な花が咲いており、撮りながら歩くと一向に進まず天望荘に着いたのは3時過ぎだった。

石尊峰頂上 横岳主峰・無名峰と三叉峰(石尊峰より) コバノコゴメグサ(石尊峰)
ミヤマダイコンソウ(鉾岳) 日ノ岳に咲いていた花:左からイブキジャコウソウ・チシマギキョウ・タカネニガナ
日ノ岳を下るころから雲行きが怪しくなっていたが休憩している間にすっかり太陽が隠れてしまった。慌てて下山開始、無雪期の地蔵尾根は17年ぶり、少々疲れているのか、上部の鎖・梯子が連続する急な登山道が歩きにくく感じた。行者小屋を過ぎ中山乗越を過ぎた辺りでパラパラと降り始める。雨は大した事なく雨具とザックカバーを装着したとたんに晴れてきた。

赤い橋が目印の柳川北沢右俣は春石尊稜へのアプローチに登ったところだが、雪がないと潅木の多いちっぽけな沢で全く別の場所に感じた。

テン場に戻ると山とは縁遠そうな学生と思しき団体のテントでほぼいっぱいになっていた。

行動中はほとんど降られなかったが、夕食を終えたところで雷鳴と共に1cmくらいの雹が降ってきた。慌ててテントに退散、その後は土砂降りとなりテン場は一時沼のようになっていた。

7/27(火)曇りのち晴れ

()下山

朝から雲の多い天気。7時ごろには例の団体がいっせいに出かけてしまい静かになった。当初の計画では硫黄岳まで花でも撮りに行くつもりだったが、昨日大方は見てしまったので今日は下山のみとする。

ベンチで食後のお茶を楽しんでいる頃に漸く日が差してくる。テントを乾かし撤収準備をしていると、家族連れや熟年のハイカーが続々と登ってきた。

この分だと早く下りても林道で車のすれ違いが煩わしそうなので、周囲の写真を撮って時間をつぶし、ゆっくり出発した。

歩き始めは木陰では涼しく感じたが、標高が下がるにつれ暑くなった。

美濃戸に着くと駐車場は平日なのにほぼ満車。気温が高いせいかアブが纏わりついてきて車に乗り込むのも一苦労だった。

【雑感】

・日曜を準備にあて平日クライミングとしたおかげで余計な気を使わず(登攀中前後に人がいなかった)登攀に集中できた。また、2日で計画したため(アプローチ下山を含め日帰り可能なルート)、のんびりと花の稜線歩きを楽しめた。
・小同心クラックは「初心者がマルチピッチを初めて体験するのに良いルート」とあったが、同感。下部で少し岩が脆い箇所があったがそれさえ気をつければ、概ね20m間隔で信頼できる支点があり岩角で中間支点も取れ不安なく登れた。私たちには不慣れなダブルロープの練習をするのにぴったりのルートだったと思う。
・今回は「花のある岩場」からヒントを得て思いついた山行だった。大同心の上のコマクサの方が一般的には絵になると思うが、小同心の頭の先にひっそりと咲いていたウルップソウが個人的には印象に残った。

【山で見かけた花

一応撮った写真を図鑑と照合して名称がわかったもののみです。ただ花は疎いので間違っているかもしれません。
()大同心基部〜小同心基部〜小同心の頭〜横岳主峰(奥の院)
チシマギキョウ
イブキジャコウソウイワオウギミネウスユキソウタカネグンナイフウロウルップソウハクサンイチゲキバナシャクナゲ

()横岳の稜線
チシマギキョウコマクサミヤマダイコンソウタカネツメクサタカネニガナイワオウギチングルマミネウスユキソウキバナシャクナゲコバノコゴメグサ

【行程】前夜発12日(赤岳鉱泉幕営)
自宅(横浜)7/25(日)20:30=(R246R16)=八王子IC=(中央道)=八ヶ岳PA23:157/26(月)4:30(仮眠=小淵沢IC4:35=美濃戸赤岳山荘駐車場5:15/40---(赤岳鉱泉---小同心クラック---横岳---地蔵の頭---行者小屋---赤岳鉱泉(幕営):山行データ参照)---赤岳鉱泉7/27(火)---美濃戸駐車場11:45/55=道の駅こぶちざわスパティオ(入浴等)12:30/14:30=韮崎IC15:40?=(中央道)=八王子IC17:35=(渋滞)=往路帰宅 20:15

【山行データ】
7/26(月)晴れ時々曇りのち一時雷雨
美濃戸駐車場540--堰堤広場626--赤岳鉱泉715/803(テント設営等)--硫黄岳・大同心沢分岐807--大同心稜取付812--大同心基部910/15--小同心基部940/1012(写真・準備・偵察)--(小同心クラック・注1--小同心の頭1140/52--(注2--横岳主峰1218/43(昼食等)--(写真)--台座の頭の手前のピーク--(写真)--横岳主峰1338--(写真)--地蔵の頭1500--赤岳天望荘1503/20(休憩)--地蔵の頭1523--行者小屋1555--中山乗越1602--赤岳鉱泉1625(幕営)

7/27(火)曇りのち晴れ
赤岳鉱泉1024--堰堤広場1107--美濃戸駐車場1145

1;小同心クラックの登り
9mm50m2本使用(ダブルロープ)。
概ね20m毎に終了点用のペツルのボルトがある。中間の残置ピンは少なくランニングビレーの大半は岩角にスリング(60cm120cm)を掛けて取った。フレンズは持参したが使用しなかった。大きめのもの(#4以上?)は核心部では使えそう。
小同心の頭まで通常は3P40m(W−)+35m(W)+15m(U〜V))のところ、安全面と核心部を撮るために肩直下のテラスでピッチを切り4P40m(W−)+20m(W−)+15m(W)+15m(U〜V))で登った。
注2;小同心の頭の先は横岳主峰直下の岩場まで踏跡のあるやや細めのリッジ歩き。
主峰直下はV程度の岩場で出だしがちょっと急な感じ、念のためビレーして登った。ここにはピンがたくさんあり冬登るなら心強いかもしれない。

【参考文献】
山と高原地図32八ヶ岳(昭文社・2008年版)
実戦!オールラウンドクライミング(廣川健太郎著・東京新聞出版局2007)
日本登山大系8八ヶ岳・奥秩父・中央アルプス(柏瀬祐之・岩崎元郎・小泉弘編・白水社・1997)
高山植物ガイドブック(鈴木庸夫・長塚洋二共著・永岡書店)

 
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GWの小同心クラック(2014年)

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