花のある岩場
小同心クラック
(八ヶ岳横岳西壁)
2010年7月26日〜27日(赤岳鉱泉幕営1泊2日
その1

その2
ちょっとバリエーション
みじんぼうの山
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山の手帳
大同心とコマクサ 【はじめに】
夏山行第一弾はなかなか目的地が決まらず迷っていたところ、学生時代読んだ短編小説のタイトル「花のある岩場(井上靖)」がふと浮かびました。ストーリーは全く覚えておらず、思い出したのは当時タイトルから連想したイメージだけ。それは「やっと登った頂の先の切り立った岩場に可憐な花が一輪咲いている」という安直なもので、このイメージに結びついたのは、どういうわけか横岳西壁(八ヶ岳)でした。

横岳西壁は、赤岳鉱泉から見上げると険しい岩の屏風のように見えます。特にその左端の一際目立つ大同心と隣の少し小振りな2つの岩峰(小同心)はずっと気になる存在。ただ、今年の4月に同じ横岳西壁の石尊稜で敗退しており、依然として私たちには眺めるだけの山でした。

ところが、無雪期登攀には向かない八ヶ岳の岩場(岩が脆い)にあって小同心左岩峰のクラックルート(小同心クラック)は比較的岩が堅く通年登れる初心者ルート(最高ピッチグレードW)とあります。小同心の頭の先は横岳主峰(奥の院)へ続いており、夏の横岳は花が多いことでも有名。万年初心者の私たちでも夏なら登れそうだし、花の方も期待できそうなので挑戦してみることにしました。

ちなみに、「花のある岩場」ですが、舞台は「奥穂のザイテングラート」で象徴的に扱われている「花」は「シコタンハコベ」でした。

【山行記録】

7/26(月)晴れ時々曇りのち一時雷雨

()赤岳鉱泉まで

予定を1日遅らせて7/25(日)夜出発。日曜日をまるまる準備に当てたのは勿体なかったが、今回は軽量化対策に時間を割くことができた(水各2L込みで私17kg(幕営装備クライミングギア)妻12kg(ロープ1本食料))。駐車場は夜になっても熱気がこもっていてうんざり、山は涼しいとよいが。

流石に一般道も高速も比較的空いており予定通り八ヶ岳PAに到着、車中で仮眠する。

小渕沢ICで中央道を下りて(1000円高速の恩恵はあり)美濃戸へ、美濃戸口から先の林道は凸凹に気をつけながらゆっくり走る。月曜早朝とあってすれ違いもなく赤岳山荘の駐車場(美濃戸・1000/1日)もまだ1/4くらいの入り(平日早朝にしては多い?)。準備している間に4〜5人のハイカー・トレイルランナーが登っていった。

美濃戸駐車場5:40--堰堤広場6:26--赤岳鉱泉7:15
赤岳鉱泉 5:40美濃戸出発。夏の柳川北沢登山道は初めて(今まではほとんど雪の季節)、緑が多いと全く雰囲気が異なり別の道を歩いているように感じた。はじめは北沢右岸沿いの勾配の緩い林道歩きでちょっとした森林浴。

堰堤広場で橋を渡ったあとは小さな橋で何度も左岸右岸と渡り歩き少しずつ高度を上げていく。段差のある岩場には階段が設置されており夏は歩きやすい(階段や丸木橋は冬スリップしやすいところ)。

赤岳鉱泉が大分近くなり右岸へ渡る橋から大同心が見えてくる。雲が多く涼しいのはありがたいが霞んでいてぱっとしなかった。この辺りから下山してくる数パーティーのハイカーとすれ違った。


7:15赤岳鉱泉到着。テントが数張りあるものの入山している人は既に登ってしまったようでほとんど人気がなかった。冬の間活躍したアイスキャンディーが取り払われクライミングボードは小屋の脇に移されている。建物の横には屋根付きの炊事場が新設されていた。受付を済ませテントを設営する。
赤岳鉱泉前にある周辺案内図

()赤岳鉱泉〜小同心左岩峰基部

赤岳鉱泉803--硫黄岳・大同心沢分岐807--大同心稜取付812--大同心基部910/15--小同心基部940

大同心(左)と小同心(右)
クリックすると冬の画像が表示されます
8:03赤岳鉱泉出発。予報では夕立が来そうなので遅ければ(9時を過ぎた場合)偵察だけのつもりだったが、何とか今日アタックできそう。

小同心へは、@大同心稜を大同心基部まで登った後、A基部から大同心ルンゼ(大同心と小同心との間の沢)へ下って、小同心側バンド下の草付き斜面を登り返すというもの。

@大同心基部まで

大同心稜へは、まず、硫黄岳方面の一般道を200mほど歩くと現れる沢(側溝程度の水流があり、これが大同心ルンゼ)へ入り、次いでその左岸沿いの明瞭な踏跡を5分ほど歩いたところから涸れたルンゼを渡って取付く。
大同心ルンゼに入る箇所には硫黄岳・大同心沢分岐を表す立派な道標があり、大同心沢(大同心ルンゼ)の方には一般登山者が誤って立ち入らないようにロープが張ってある。
大同心ルンゼを右岸に渡って大同心稜に取り付く箇所にもロープがあり比較的明瞭な踏跡が尾根へ続いていた。
尾根に上がると樹林に覆われた
U字溝状の明瞭な登山道、勾配は下の方は一般道並みだが次第に急になり大同心が見え隠れするころには立ち木につかまりたくなるような登りとなる。湿度が高いようで汗が噴出してくるも最近買った吸汗速乾シャツのおかげで然程不快感はなかった。アブ・ブヨ等はこの時期にしては少なく昨年の奥穂南稜のようなことはない。

ちょっとした岩場を登って大同心基部のバンドに出る。
硫黄岳・大同心沢(大同心ルンゼ)の分岐 大同心沢を渡って大同心稜へ
大同心稜を登る 大同心の基部はもうすぐ 大同心(基部から)

A小同心左岩峰基部へ
大同心基部で小休止。大同心の正面壁は間近で見るとやはり迫力があった。ここは見るからに難しそうで本当のクライマーじゃないと無理。

小同心に目を移すとスケールは小さいが結構立っていて、もしフェースルートだったらとても私たちには太刀打ちできそうにない感じ。アプローチは大同心ルンゼまでは確認できるもその先は判然とせず、妻を上に残して急なガレ混じりの草つきを下りてみる。幸いルンゼ先のバンドの下には細いがしっかりした踏跡が続いていて一安心。妻に声をかけて踏跡のある草付き斜面を登る。

イワオウギ背景は大同心
数は少ないものの様々な花が咲いていて目を楽しませてくれる。振り返ると大同心が荒波に揺れる船の舳先のようにそそり立っており(正面から見たときとは形が異なる)、背後には硫黄岳の稜線の奥に蓼科山が覗いていた。

小同心左岩峰北壁が間近に迫り踏跡は直上するもの(北壁ルート(V+)の取付?)と右上するものとに別れる。明瞭な後者をひと登りすると平坦な大テラスに出た。

この大テラスは左右に分かれた小同心稜が合したすぐ上で、左岩峰西面のやや右寄り(の下)にある。すぐ先(南)は小同心ルンゼ(源頭)を挟んで右岩峰がそそり立っていた。

大同心基部から小同心を望む小同心左岩峰ルートイメージ(正確ではありません) 大同心直下のバンドを大同心南稜方向
へ少し歩く
大同心基部から小同心基部へ
バンドから大同心ルンゼへの下降地点 大同心ルンゼへ下りる→拡大画像 ルンゼから小同心基部へ登り返す→拡大画像
(おまけ)大同心ルンゼのツメ付近の画像

 ()小同心クラック登攀

小同心左岩峰基部1012--(小同心クラック)--小同心の頭1140/52--横岳主峰(奥の院)1218

小同心クラックは、頭上の左岩峰中央にある顕著なチムニーを登るもので、大テラスから階段状のフェースを左上して取り付くとのこと。

妻を待つ間ルート図と照合しながら取付を探すもピトン等はどこにもなく、ちょっと不安になる。ただ頭上左の浅い岩溝、その先のピナクルは写真等で見覚えがあり間違いないようだ。階段状フェースは予想より立っているが、ホールドは豊富でスリングを掛けられる岩角もありそう、まあW以下のルートなら登れないことはないだろう。
一通り偵察を終えて準備に掛かろうとしていると、花を撮っていたという妻が漸く登ってくる。作戦会議の結果段取りは次のようになった。
・小同心の頭まで通常の3ピッチ(40m(W−)+35m(W)+15m(U〜V))を2ピッチ目の中間テラスでピッチを切って(∵後半15mが核心部)、都合4ピッチ(40m(W−)+20m(W−)+15m(W)+15m(U〜V))で登る。
・つるべで登り、奇数ピッチを私、偶数ピッチを妻がリードする。

大同心方向から人の声が聞こえていたが、どうも稜線上の人のものらしい。いつの間に良い天気となり幸いルートも独占状態のようだ。

P目(W−・40m弱):小同心左岩峰基部L1012--1P目終了点F1042

私リード。階段状フェースを左上し(15m)広いチムニーを登ってピナクルの上の広いテラスでピッチを切った(終了点にアンカーボルトあり)。

階段状フェースは岩が脆く下のほうで人頭大の岩が抜けて肝を冷やした(フォローの妻も抜けたとのこと)。以後入念にホールドをチェックしながら登ったが簡単な割に緊張した。
チムニーに入ってからはホールドも安定し一安心。
ここはチムニーというより急な広い凹角、下手に身体を中に入れると仰け反るようになるため、ほとんど開脚状態で出来るだけ外側のスタンスに立って登ると容易だった(ステミング)。
チムニーの入口にペツルのアンカーボルトはあるが中間支点ほとんどなく、半分は岩角にスリング(60cm120cm)をかけて取った。

小同心クラック1P目
P目(W−・20m):1P目終了点L1049--2P目終了点F1109

妻リード。テラスの上の被った岩を右から巻き再びチムニーに入りステミングで登って凹角を抜けたテラスまで(終了点にアンカーボルトあり)。
P目より勾配は急だが(75度くらい?)身体がすっぽり入るくらいの広さで高度感がないのは助かる(下を覗くと怖い)。中間支点は1P目より多く安心(ピトン)。

小同心クラック2P目

P目(W・15m):2P目終了点L1114--3P目終了点()F1127

私リード。テラスの上は左右二通りのルートが採れるとのこと。いずれもクラックがあり、右ルートは傾斜が緩いがガイドブックではピンがないらしい。左ルートは出だしが被っているがその下にピンがありグランドフォールの虞はないのでこちらを登った。

被った岩は身体を一旦左のスカイライン側に出すようにして越える(ここが核心部でちょっと宙に放り出されるような感じ)。ホールド・スタンスとも十分あり、ごく短いものなので怖いと思う間もなく通過してしまった。後はクラックに戻りステミングでひと登りすると肩に出た(終了点にアンカーボルトあり)。

クラックにはスリングを掛けられる岩角のほか信頼できるピンもあり中間支点は問題なし。

小同心クラック3P目
右画像:小同心の右肩(3P目終了点)より赤岳・権現岳(最奥)・中岳→拡大画像
その2
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