甲斐駒ヶ岳-鋸岳縦走
(南アルプス北部)
2003年9月1日〜2日(幕営1泊2日)
ルート整備前のスリリングな岩稜縦走
 その1
その2  その3 
その4 その5  その6 
                                 
 【はじめに】

鋸岳(2685m)は南アルプス最北部の岩稜の山で中ノ川乗越〜横岳峠の岩峰群の総称。第一高点(最高峰)第二高点(2675m)三角点ピーク(2607m)等があり、北アルプスの前穂高岳北尾根や剱岳八ツ峰と並ぶクライマーの領域である。主稜線南東の甲斐駒ヶ岳六合目に六合石室(無人)が建つ。

<アルペンガイド別冊・山歩きのための山名・用語辞典(山と渓谷社)より>
鋸岳は深田百名山を目指していたころ、緑の多い南アルプスにあっては珍しい岩稜の山ということで興味を持ちました。昭文社のガイドマップにも破線一般ルートとして載っており、焼岳〜西穂〜奥穂を縦走して調子にのっていた時期だったこともあり(1995年)、「次は鋸岳だな」と思っていました。
 ところが、知人に話すと「素人にはちょっと難しいよ」と言われるし、調べてみると他の一般ルートみたいに鎖等がなく岩登りの心得がないと登れないとのこと(注)。
 以来、甲斐駒や仙丈に登る度に気にはなるものの、ずっと先延ばしになっていました。ちょっとはクライミングもかじったし、多少は経験も積み自信もついたので(?)、漸く今回の挑戦となった次第です。
 コースはアルペンガイドにもある甲斐駒→鋸岳で角兵衛沢を下って戸台に戻るもの。甲斐駒を最終目標とする逆縦走の方がドラマチックのような気がしますが、一般的には日程が1日増えるのと(2日目は仙水峠か北沢峠泊)、せっかく北沢峠までバスが上がる時期に行くのだから少しは楽をしたいという妻の希望で駒→鋸となりました。
(注)近年整備され(鎖・道標が設置)現在は(2010年)このルートもやっと普通の一般登山道らしくなったようです(それでも難コースには変わりない)。以下の山行記録は当時の状況の覚書みたいなもので(初心者の苦労話),コースガイドではありません。
 
 【山域・山名】
南アルプス北部 /甲斐駒ヶ岳(2967m)鋸岳(2685m)
【メンバー】夫婦(kniferidge&monchan)
 【山行記録】
 9月1日北沢峠〜甲斐駒〜六合目石室〜中ノ川乗越
 <戸台河原の駐車場7:40〜北沢峠9:17>
  冬には何度か来たことのある河原の駐車場(100台位駐車可)には釣りに来た人の車が1台だけ。仙流荘前には8:25のバス(平日の始発)を待つ登山者の姿が見えたが、この時期ここから歩く人はほとんどいないようだ。昨夜の雨も戸台川の水量には大して影響がなかったらしい。
 始発バスまであまり時間がないので丹渓荘経由の道(エアリアマップでは最寄の戸台大橋バス停まで40分)はやめて近そうな川沿いの道(駐車場の奥=戸台川の下流方向にあるゲートを入る)を歩く。
 この道は一般車両は通れないが舗装道路、5・6年前の春仙丈の帰りに丹渓荘経由の道路が土砂崩れで通行止めになったとき利用した道だった。
 10分強で戸台大橋到着。8:35のバスには余裕で間に合った(乗り遅れると2時間待ちとなる)。
平日なのにマイクロバスはほぼ満員。睡眠不足のためすぐ眠りこけてしまった。
しばらくして前からの異臭で目が覚めると(前席の若者が戻していた)、バスはおそろしく高度感のある所をのろのろと走っていた(歌宿バス停付近)。
左手には鋸岳が大きく、深くV字に刻まれた中ノ川乗越から第一高点にかけては戸台川めがけて一気に切れ落ちているように見える。
熊穴沢右俣は一般登山道だし現地に行けばそんなわけないのだが、ここからの鋸岳はなかなか迫力がある。
 
高山植物の説明をしていた初老の運転手氏も「甲斐駒・仙丈は年に何万人も登るが、鋸岳へ行く人は百人にも満たない」等々鋸岳の難しさを盛んに強調している。
年間100人の真偽はともかく、確かに、この光景を前にして脅されると、その抑止効果は大きいかもしれない。実際、小心者の私はホントに行けるか心配になってしまった。
雲間からときおり甲斐駒が姿を見せていたが眠気には勝てず再び夢の中、次に目が覚めた時は北沢峠だった。
 <北沢峠9:30〜双児山〜駒津峰〜甲斐駒ヶ岳13:00>
 甲斐駒は、ちょうど同じころの季節と正月の2回登ったことがある。いずれも仙水峠経由で登ったので今回は双児山経由で歩いてみた(他の人は皆長衛小屋の方(仙水方向)へ行ってしまった)。
 樹林の中のジグザク道は急だが歩きやすく順調に高度を稼いでくれる。展望がないのが玉に瑕、1時間ほど単調な登りを我慢すると森林限界となりほどなく双児山(道標がある所で頂上からは少し離れているようだ)に着いた。
 周囲を見回すと南西方向から雲が流れていて期待していた北岳や仙丈はさっぱり見えない、標高が低いのと方位が幸いして鋸岳だけは良く見えた。そういえば甲斐駒や仙丈で他の山が雲の中でも鋸岳はいつも見えていたような気がする。
 
 駒津峰へはわずかに下って一面ハイマツに覆われた斜面を登り返す。近くに見えている割に頂上は意外に遠く時間がかかった(40分)。仙水経由の人も到着する時分だと思ってみるも頂上には誰もいない。双児山では見え隠れしていた甲斐駒がここでは漸く全貌を現す。この分だといつ見えなくなるかわからないので甲斐駒北西尾根〜鋸岳のパノラマをデジカメに収めた。南方の山は相変わらず雲の中、まともに見えるのはお隣の栗沢山くらい。
 駒津峰より先はハイマツ交じりの岩稜歩き。六方石へは頂上から少し下り登り返して小岩峰を越える。小岩峰付近は少々痩せた岩稜となっており山梨県側(右)につけられた巻道を下る。巻道から稜線に戻ると巨岩がごろごろした所に出る、その中でも際立って大きいのが六方石。岩陰にビバークできるくらいの空間がある。
 
  六方石からは稜線をそのまま直登するルート(冬の一般道)と一旦摩利支天方向へトラバースして登るルートに分かれる。
今回は直登ルートを登った。→エアリアマップでは直登ルートの方が難路とされるが、過去の経験では私たちには後者の方がザレ場のトラバースがあり歩きにくく感じた(冬季は滑落が多い)。
直登ルートは花崗岩の大岩が積み重なった岩稜。確かに、下の方は手を使って登る所もあるが、ペンキ表示にしたがって歩くと途中から山梨県側のザレ場の登りとなる。
 頂上を目前にしてKniferidgeがバテてしまいペースダウン、最後は特製ドリンク(アミノサプリ+クエン酸)を片手に休み休み登って何とか頂上に到着。頂上にはやはり誰もいなかった。
昼食がてらザックをおろして休む。歩いているときは甘いものばかりだったので朝食の残りのおにぎりがとてもうまかった。
着いたときは少しは展望があったもののいつの間にかガスに包まれ暗くなる。鋸岳はうっすらと覗いているが天気は下り坂のようだ。
大きく崩れるようにはみえなかったのでとりあえず六合目石室まで行ってみて様子を見ることにした。
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 ちょっとバリエーション
山の手帳 



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